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第26話
しかしすでに熱を持ち始め、一番刺激を待ち望んでいる部分には触れずに、右足を上に持ち上げられる。
そして足のつけ根から、腿の内側に濡れた熱い舌が滑らされた。
「は、んっ……くぅ」
志乃は右手で絹布団をしっかり握り、左手の拳を噛む。そうしないと、とんでもないことを口走ってしまいそうだったからだ。
そこじゃない。そこじゃなくて、もっと。
内腿にくちづけられてきつく吸われると、志乃の腰が淫らに揺れる。
時折、吐息が性器にかかり、その度に声を上げそうになってしまった。
さらにぐいと腰を抱えられ、大きく割り開かれた足の間に、なにかぬるりとした液体を垂らされた。
「な、に……?」
あまり冷たくはなかったが、得体の知れなさに志乃は少しだけ身を強張らせる。
「あ! やぁっ!」
後ろのきつく窄まった粘膜を、ぬるぬると指が撫でてきた。
以前、秋成に乱暴に扱われて痛みに苦しんだ経験があるため、そこを弄られることにはまだ怯えがあった。
「そこ、や……っ、はぁ、んっ……」
けれど、そこへの愛撫も他の部分と同じく、執拗なまでに丁寧で優しい。
徐々に志乃の身体から力は抜け、性器はさらに頭をもたげていく。
「くぅっ、んああ……っ!」
入り口を充分に慣らしてから、ぬるついた指がゆっくりと中に入ってきた。浅く忙しい呼吸を繰り返す志乃の首筋や額から汗が滴る。
指はねっとりと肉壁を掻き混ぜるようにして奥へと進んだ。
それからそっと引き抜かれ、びくっと志乃の身体が反応すると、またぐっと奥まで押し込まれる。
くちゅ、と液体と粘膜が擦れる音が、視界が塞がれている分、余計に大きく志乃の耳に響いた。異様な感覚に肌が粟立つ。
「も、いや……もぅ、ひ、ああっ!」
突然、これまで感じたことのない快感が、志乃の腰から背骨を貫いて悲鳴を上げた。
指はその場所をもう一度探り当てるようにして動き、集中的に抉ってくる。
「あぁっ、なに、こんな……あっ、はぁ、っ」
閉じることのできない志乃の唇の端から、唾液が零れた。
そこを強く刺激されるたびに、内部の指を締めつけてしまう。
反り返った自分のものの先端も、その反応に合わせるようにひくひくと震えて濡れ初めているのがわかる。
血のような色の絹布団の上で、いかに淫らな痴態を客に見せているのかと思うとたまらなく恥ずかしい。
そして恥ずかしさを感じると余計に身体は敏感になるようで、さらに志乃は追い詰められていく。
苦しいほどに感じているのに、達することのできないもどかしさに、志乃は自分の性器に手を伸ばした。しかし、その手はつかまれて阻まれる。
「は……ん、やぁっ」
と同時に内部からずるりと指が引き抜かれ、快楽を中断された切なさに志乃はきつく眉根を寄せた。
客は一度身体を起こし、体制を変える。
志乃の身体をうつ伏せにして抱え、腰だけを高く上げさせた姿勢にさせられた。
とらされた格好に屈辱を感じる余裕は、もう志乃にはない。
客の右手が後ろから志乃の腰に、左手は胸に回される。
そして志乃の、ぬるついた尻の間に自らの猛り立った性器を押しつけてきた。
「あぅ、うん……っ」
乳首がきゅっとつままれ、性器を握られて、志乃はすすり泣くような声を漏らす。
互いの肌はどちらもしっとりと汗をかき、そのせいかあの香りがいつもよりずっと強く鼻腔をくすぐった。
汗と混ざったそれはひどく官能的だ、と志乃は快感に溺れかけた頭でぼんやり思う。
客は志乃に密着させた性器をゆっくりと動かして擦りつけてくる。
そうしながら自らの性器を擦ってくる右手に、志乃は手を沿わせた。今度は客も邪魔をしない。
客の手の甲の上に自分の手のひらを重ねるようにして、根元から先端へと扱いていく。
志乃の先走りが、互いの指を濡らした。
擦り上げられるたびに、耐え切れない甘い刺激が込み上げてきて、足の爪先までが痙攣するように震える。
早くも、限界だった。
「はぁっ、ああっ、も……いく……っ!」
耐え切れない、と泣き声を上げると同時に、ぐっと背後の粘膜に硬く熱いものが押しつけられた。
「あ、ぁあ───っ!」
志乃が絶頂を迎える直前に、熱を持って疼く粘膜をこじ開け、猛り立ったものが押し入ってくる。
「いっ……痛、あ! ああ」
断続的に短い悲鳴を上げてしまうものの、しっかりと解された内壁は痛みよりも、ずっと強い快感を志乃に伝えてきていた。
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