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第33話

その夜、目隠しをさせる客がやってきた。  もしかしたら唇を重ねてくる相手が秋成なのだと思うと、弄ばれているだけかもしれないというのにどういうわけか志乃の身体は高揚し、くちづけだけで恍惚となってしまう。  けれどこの客が秋成であれば、優しく愛してくれる目隠しをさせる客、という者が存在しないということでもある。  途中、志乃は何度も、勝手に目隠しを取ってしまおうかと考えた。  しかし、それをやってしまったら、正体が誰であろうと、もう二度と自分の元にはこなくなるかもしれない。それを思うと、怖くてできなかった。 「っあ、ああっ……ああ」  仰向けに寝かされて性器をゆるゆると撫でられ、後ろには指を二本入れられて、志乃は快感に溺れる。 けれど、正直すぎる身体に感情はついていかない。 「や……いゃ、あっ」  先端を爪の先で軽く刺激され、志乃は淫らに腰をくねらせた。 陰茎が揺れると蜜が、つっと滴るのがわかる。  内壁は爛れたに熱を持ち、指を奥まで差し込まれる度、志乃の喉が、ひっ、と鳴る。  ぐるりと回された指が、指の腹を上にして、あの一番感じる部分を探ってきた。 さらなる快楽の予感に、ひくひくと粘膜がざわつく。 「ひ、ああっ!」  目の眩むような甘い痺れに、志乃の両足の指が内側にきつく曲がった。  そうして嬌声を上げ、身体は素直に喜びながらも、心にはどうしようもない不安が押し寄せてくる。  今、この浅ましい志乃の姿を目の前にしているのは、一体誰なのか。  もし秋成だとしたら、やはり玩具として弄んでいるのではないか。 「はぁっ……も、や……っ」  もどかしいほどに優しく、焼けそうに熱く、がちがちに固くなってしまっている性器を擦り上げられる。  いきたい。すごく気持ちがいい。  けれど、こんな自分の様子を、秋成は嘲笑って見ているのかもしれなかった。 そうだとしたら、とても辛い。 「んぅ、うう……っ」  また長く器用な中指が押し入ってくる。  限界まで勃ち上がった志乃のものを摩る手から力が抜けると同時に、ゆっくりと中に挿入された指の腹が、内壁を擦り始めた。 「あ、あっ……」  感じる部分を集中的に責められて、朦朧とするほどに、いい。 だが、まだそこへの刺激だけではいけない。  性器を撫でる手のひらは優しすぎて、もどかしい。 時折、思い出したように先端を擦られ、びりびりと痺れが走るが、すぐにまた焦らすようにそっと触れてくるだけになってしまう。 「う……ああ……!」  両足を大きく開かされ、恥ずかしい部分に指を咥え込まされて、先端から蜜を溢れさせる性器を撫でられて、唇の端からは唾液が糸を引いている。  こんな格好を秋成が、冷たい目で見ているのではないか。  どうしようもない淫乱だと、蔑んで、見下ろされているのではないか。 「いっ、いや……あああ!」  びくびくと、志乃の身体が大きく痙攣した。 と同時に、下腹部が自分の放ったもので濡れたのを感じる。 「く……っ」  志乃は弱々しく身体を丸めた。もう見られたくない。客はそっと指を抜き取るとその身体を上向けにして、汚れを拭う。 「……っ、……う、う……」  志乃は顔を両腕で覆うと、喉がひくっとしゃくり上げる音を立てた。 「い、いや……こんなのは、もう、いやだ……」  肩を震わせる志乃を、客は優しく抱き締めてくる。 けれど、志乃の言葉に本気の拒否を感じ取ったのか、行為を再開する気配はない。涙に唇を寄せ、髪を何度も撫でてくれる。 『辛かったか』  抱き締めたまま背中に書かれ、志乃は子供がいやいやをするように首を振った。 「ごめん……違うんだ、ただ……」  志乃は分厚い胸に、頬を摺り寄せた。 今日は風呂ですっかり落ちてしまっているのか、なんの香りもしない。 こんな中途半端な状態なのに、自分の気持ちばかりが大きく膨らんでいくことに、これ以上は耐えられない、と志乃は思った。

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