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第47話

秋成の両手の指が、志乃の尖って色づいた乳首に触れる。 「んん……!」  それだけで感じてしまう志乃に、秋成は苛立ったようだった。 「先刻までも、そうしてよがって見せていたんじゃないでしょうね」  押し潰すように強く摘まれ、志乃は顎を反らせた。 指の腹で擦り立ててから、そうやって痛いほどにきつく刺激することを秋成は何度も繰り返す。  薬のため、痺れるような感覚は倍増されて性器もさらに熱を増していく。 「んっ、んんぅっ!」  しつこく弄られて、びくびくと志乃の身体が跳ねる。 限界まで昂ぶっていたものが、乳首への刺激だけで弾けてしまったのだ。  秋成も驚いたようにそれを眺め、さらに眉間がきつく寄せられる。 「そんなにあの男に、抱かれたかったんですか?」  違う。媚薬を使われているからだ。  そう言いたいのに言えず、恥ずかしさと悔しさに志乃の目に涙が滲む。  秋成は憤然とした表情のまま、志乃の身体に指を這わせる。 悲しさと憤りで志乃の心は一杯なのに、身体はまるで違う反応をしてしまう。  かすかな性感帯でさえ痙攣するほどの快感が皮膚を走り抜けていく。 そしてすぐにまた性器は硬度を取り戻していた。 「ここも、こんなに解けて」   油でぬるついた志乃の中に、秋成は指を入れてくる。 「っ、んっ、……っ」  つう、と新しい先走りの液が屹立した志乃のものを伝って流れた。  名前を教えたのも指名を受けたのも、一人しかいない。 毎晩、男を咥えこんだりするわけがないのに。  身体と心がばらばらに引き裂かれてしまったように辛くて、志乃は遂に堪えきれず、泣き出してしまった。  余計にみっともないと思っても、後から後から涙が零れるのを止めることができない。  その間にも秋成の指は志乃のいいところを探り当て、抉るように責めたててくる。 「んっ、んぅぅーーーっ!」  あっけなく二度目の射精をしてしまい、志乃はあまりの恥ずかしさに、このまま消えてしまいたいと思う。  それでもまだ興奮が収まらず、ひくひくと痙攣を繰り返す身体を、秋成はむっつりと裏返して拘束を解き始めた。 猿轡も取られ、ようやくまともに呼吸ができるようになる。  秋成は忌々しそうに拘束具を部屋の隅に投げ捨て、緋襦袢を志乃の身体にかけた。  志乃は緋色の絹布団の上で胎児のように身体を丸め、泣きじゃくる。 まだ薬のおぞましい効果は持続していて、少しでも刺激されたら身体が熱を持ってしまいそうだった。  猿轡を噛まされていた唇の端が痛むが、いつまでも誤解されていたくない。 志乃は懸命に嗚咽を抑え、理由を言う。 「く、薬。……いやらしくなる、媚薬を飲まされたから」 「媚薬? そんなものが……」  とても信じられないというふうに、秋成は眉を潜める。 だが、すぐに夕凪が没収したものに思い至ったらしい。 「……あのガラス瓶が? 俺はアルコールの類だと」  そういうことか、と秋成は驚きと怒りが混じったような顔になる。 秋成はさきほどの男のようには、色街の事情に通じていないらしい。  誤解とはいえ、手当たり次第に男と寝ていたと秋成に思われたことが悔しくて、どうしても涙がこみ上げてきてしまった。 「たく、ない……」 「なんですか?」  志乃はしゃくりあげながら、懸命に言う。 「あんな男と、寝たくない。客なんて……とりたく、ない」 「じゃあ、なぜあんな男の指名を受けたりしたんですか!」 「だって俺は色子なんだぞ! 指名を断りたきゃ、荷風になるしかない。……父上の療養費だって必要なんだ。売られたんだから、仕方ないじゃないか!」 「……何人の指名を受けていたんです」  これ以上はないほどに深く、秋成の眉間には深く皺が刻まれている。 「さっきの、あの客だけだ!」  しばらく秋成は、なにかを考えるふうに黙っていたが、やがて畳に膝をつき、そっと志乃の顔を覗きこんできた。 「それは本当ですか」 「嘘なんか、つかない。夕凪に聞いてみればいい」 「だったらあなたは、俺と……もう一人の客としか寝ていないんですね?」  秋成は志乃の心の中まで見透そうとするかのような、鋭い目で見つめてくる。  けれどその声にも表情にも、もう怒りはかんじられなかった。 志乃はまだ涙に濡れた瞳で、その目を見つめ返す。  ──もう一人の客。 そんな人間が存在しないことを、まだ志乃が気づいていないと思っているのだろうか。  想いを振り絞るように、志乃は打ち明けた。 「……そうだ。俺を抱いたのは、お前だけだ。秋成」  秋成は、少しだけ眉を寄せ、それから鋭い瞳を大きくする。

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