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第9話
しばらく自己嫌悪で落ち込んでいると、スマートホンが軽快な音楽を鳴らした。
俺は毛布の上に伏せていた端末を拾いあげた。
バックグラウンドで進んでいたマッチングアプリのインストールが終わって、登録画面が表示されたところだった。
もう雅人に身勝手な期待をするのはやめよう。
勉強を頑張っている雅人の邪魔になりたくない。
俺は気をとりなおし、プロフィール画面を埋めていった。
名前はとりあえず「りくや」。生年月日、血液型。趣味は、サッカー観戦とゲーム。好きな食べ物はお好み焼きとチョコレート。好きなタイプは――理知的で落ち着いた大人っぽい人が理想です。
忙しく親指を動かして打ち込む俺の脳裏に、ちらちらと雅人の顔がよぎる。
――あと努力家で優しくて、いつも俺のワガママをきいてくれて。
ダメだ。もう泣きそうになってきた。
こんなことで本当に新しい人と出会えるのか、俺。
自分の未練がましさにあきれながら、なんとかプロフィールを完成させた。
性自認Mを選択し、彼氏を募集にチェックマークを入れた。
自分がゲイなのかどうかはまだよくわからなかった。
雑誌の表紙になっているような女性のグラビアも綺麗でセクシーだと思う。同時に、男性アスリートの鍛えられた肢体もセクシーだと思う。
俺はバイセクシャルかもしれないな、と薄々思っていた。
雅人が傍にいたから男性が気になるのか、男性が気になるから雅人にこだわってしまうのか、そこは自分でも判然としなかった。
登録を終えると、アプリの画面に次々にマッチングしそうな男性のプロフィールが表示されていた。自分の写真を登録している人もいるし、俺と同じようにしていない人もいる。後ろ姿や、加工した画像を使っている人もいるようだった。
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