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第11話
『セクシー大根』以外にも、マッチングアプリには、いくつかメッセージが届いていた。
元気玉『りくや君は欲求不満? よかったら割り切ったおつきあい始めませんか。ホテル代はこちら持ちで、お小遣いも用意できますよ』
52歳。167・92の『元気玉』さん。
パパ活は予定してないので却下。
政宗『自分は埼京線沿線住み、大学生です。リアルできそうですか?』
19歳。170・63の『政宗』さん。
リアルというのは実際に会ってみることを指すらしい。
少し悩んだが、とりあえず最初にアプローチしてくれた『セクシー大根』さんとしばらくやりとりしてみようかな、と考えた。実際に会ってみるまでは、北村匠海なのか、ムロツヨシなのかわからないけれど。
ひょっとすると、最初にああいうことを書くも相手の興味を引くためのテクニックなのかもしれないな、などと深読みもしてみた。
実際、俺は釣れたわけだし。
『セクシー大根』さんへの返事の文面を考えた。
緊張する。一応失礼のないよう、メモ画面を出して下書きを作ってみた。
『男同士でつきあうってどういう感じなんですかね。俺は初めてでどうしたらいいのかよくわからないんで、まずは普通に学生っぽいデートからがいいです。どうでしょうか? よろしくお願いします』
こんなもんか。
アプリを開き直したとたん、スマートホンが震えた。
『雅人:お前、本気なの?』
え。
頭が真っ白になる。え、え。
『雅人:これ、俺へのメッセでいいんだよな?』
あ、これメモ帳じゃないわ。雅人からのメッセージの返信欄じゃん。
『あああああっ』
俺は自室の床の上にエビぞりにのけぞって倒れた。
なんてことだ。昨夜一度、雅人への返信を打とうか迷ってて、返信欄ひらいてカーソル置いてそのままだったんだっけ?
俺はそこへ『セクシー大根』さんへのメッセージを打ちこんでEnterしてしまったようだ。
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