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第32話 勇者様、葛藤する R18

 次の瞬間、ジェイミーは上半身を起こし、ルナトゥスをベッドに押し付けた。  ルナトゥスよりはまだ背丈はあるし、この一年家事育児だけでなく農園作業や大工仕事に従事してきたジェイミーの肉体には、そこそではあるが筋肉が付いた。その気になれば、まだ少年体型のルナトゥスをねじ伏せることは難しくない。 「ジェイミー?」   さっきまでは優勢を取られていたジェイミーだが、こうして見るとやはりルナトゥスはまだ幼い。  この一年、幼い体の時から大切に見守って抱きしめてきたルナトゥス……だ。 (なのにどうしてこんな気持ちになるんだ。こんないけないことを一緒にしたい、だなんて)  湧き出す劣情をなんとか抑えようと、ふうふうと息を吐いて呼吸を整える。  だが、熱い息を吐く唇をルナトゥスに塞がれた。 「ん、んんっ、ル、やめ、ンッ……」  首に手を回され、いいように口内を蹂躙される。ルナトゥスの唾液には媚薬でも入っているのだろうか。酸欠なせいだけじゃなく、快感で頭がぼんやりしてくる。  知らず知らず瞼が閉じて、ジェイミーも無意識にキスに没頭してしまい、そのうちに再び握られた熱塊を上下されていた。   「ねえ、ジェイミーも僕のを触ってよ。僕、ジェイミーの手、凄く好きなんだ。あったかくてぽかぽかほわほわする」  ルナトゥスが上半身を起こし、ジェイミーに跨る。  「お願い」と微笑まれて、胸がきゅうっと苦しくなった。  切なさにも似た恋しさが胸をより苦しくする。 「好き。ジェイミーを愛してるの」  ルナトゥスはジェイミーを絶頂に導きながらも、空いている方の手で胸に触れてきた。苦しさに温かさが加わる。 「……俺も、ルナを愛してるよ……」  なんだろう。この気持ちは。  今までと同じなようで、少し違う。ただのぽかぽかほわほわじゃなく、ちょういい湯加減の湯に煮えたぎる湯を差された時のような、急激に身体が熱くなるような感覚。指先も、頭の芯も沸騰するように熱い。  そう感じると、体が勝手に動いた。  自分からルナトゥスの唇を迎えに行き、ルナトゥスの果実を手で包んで夢中で上下する。 「ァッ……、ジェイミー、ジェイミー、んっ、気持ちいい。……好き。ジェイミーの手、好きぃ……気持ちいいよぅ」    ルナトゥスもまた、顔も体も火照らせながら、手の動きをジェイミーに合わせた。  二人の手の動きはどんどん早くなっていく。   「ルナ、ルナ……俺も、気持ち、いい……っ、でもっ」  どうやらジェイミーのほうが先に限界を迎えるらしい。  腹の奥の甘い疼きが双珠を震わせ、震えはこれ以上なく張り詰めた熱塊をぶるりと震わせた。 「あ……ああぁっ……!」  ジェイミーの露頭の口から白濁が吹き上がる。同時に、目の奥で光が弾けたような眩しさと鋭さを感じ、目をギュッと閉じたジェイミーは、そのまま真夜中まで瞼を開くことはなかった。 *** 「ああああぁぁぁぁ、やっぱりこんなのよくない……!」  喉の渇きに目が覚め、体を起こすと、隣にルナトゥスが眠っている。いつもの光景のようだが違うのは、上掛けの毛布をめくってみると、二人とも寝間着を着ていないことだ。    ルナトゥスとのめくるめく淫行をすっかり思い出したジェイミーは頭をかかえた。  なんてことをしでかしてしまったのだろう。ジェイミーはルナトゥスを立派に育て上げるとルナトゥスの両親に誓ったのだ。彼らが天から見ていたら激昂するだろう。  激しい雷が落ちてきて、自分も幼児化してしまうかもしれないと身を震わせた。 (子育てってゆっくり積み重ねて行くものだろう? それがこんなに早く成長したら、ルナもだけど俺も気持ちがついていかないよ……愛してるって、俺、ルナに言ったけど……こんなの、家族への愛してるとは違うだろう?)  家族には自分の性欲をぶつけるような浅ましい行動は取らない。長く暮らしてるハンナ相手に置き換えれば、背筋がぞっとして思考が停止した。 (……あれ? そう言えば真夜中なのに姉さんはまだかな)  ハンナはここ最近外出が多く、夜も遅くなることが増えていた。  星が輝き出せば他の村に出入りすることは禁じられているから、ココット村の中にいる友人宅か、#市場__フェスタ__#のある繁華街に行っているのかどちらかしかない。 「でも、ココット村の友達は皆結婚してるからそんなに遅くまでお邪魔できないだろうしな」  ジェイミーはルナに寝間着を着せ終わり、自分も寝間着と上着を着ると、居間の方へ出てみた。  やはりハンナは戻ってきていない。不安な気持ちが#鳩尾__みぞおち__#を刺激して、外に探しに行こうかと悩んだ。その直後。  ドンドン! と玄関扉を叩く音がして、ジェイミーは急いで扉を開けた。その先にはがっしりとした体格の男がいて、背中にハンナを背負っている。 「ね、姉さん!?」  男は失礼します、と一言詫びてから室内に一歩足を踏み入れ、ハンナを下ろしてジェイミーに預けた。ハンナから酒の匂いが漂う。 「あの、これは一体……」  ジェイミーより十ほどは年上か。日焼けした小麦色の肌に、素朴な目鼻立ちながら真面目そうな容貌をした男は、ジェイミーに問われて太い眉をハの字にして苦笑した。 「私は#市場__フェスタ__#にある酒場の店員です。こちらの女性が酔いつぶれてしまったのでこうしてお届けした次第で」 「ええ、そうなんですか? 姉が酒場に出入りを? 強くもないのになぜ……」 「ここ最近いらっしゃるようになって……ただ、数人の男達に誘われているようですが、その……男達はあまりいい噂を聞きませんので、あまり羽目をはずされませんようお伝えください。では私はこれで」 「あ、ああ、すいません! ありがとうございました」  ジェイミーはハンナをかかえたまま頭を下げ、男を見送った。  ──姉さんが、酒場に男達と……!?

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