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第47話 魔王様、勇者様 幸せに包まれて
夜は大宴会で、またもや集会所は大騒ぎ。
なんと言っても勇者様と(元)魔王様の結婚式だ。二人がいれば、たとえこの先新しい魔王が誕生しようとも、愛の力で悪を滅してくれる。そう強く信じられるくらい、二人からは力強いオーラが発せられていた。
深夜まで続いた宴会は集会所で酔い潰れる村人を続出させ、仮眠所のようだ。
ハンナも、ルナトゥスが魔の森に消えた時から|断《た》っていた酒に酔って眠ってしまうし、ジェイミーもかわるがわる注がれる祝の酒を断われず、強くはないのに全て飲んでしまった。
「ふにゃー。もうだめりゃ~」
「ジェイミー、大丈夫か? 家に帰るか?」
顔を真っ赤にしたジェイミーは軟体動物のように身体を揺らし、ルナトゥスの肩にもたれかかる。
「うん。もう眠たいよぉ~ルナも眠いらろぉ? 帰りょ……」
言いながら、もう眠っている。
ジェイミーはルナトゥスを背負い、ハンナの元まで行ってハンナの肩を揺らした。
「姉さん、姉さんも帰ろう」
「うぁん? わらしはいいわ~。久しぶりらからもうちょっと飲むーカンパーイ! ジェイミー、ルナ、おめれとー!」
祝ってはくれるが、ハンナの顔も盃も、隣に座っているマダム・ヨーコに向いている。
マダム・ヨーコは苦笑しつつ「ハンナは任せなさい」とルナトゥスを送り出してくれた。
家に着き、ルナトゥスはジェイミーをベッドに下ろす。
ジェイミーはせっかくのベールも王冠もずれて、結婚衣装のトガも着崩れている。
ルナトゥスはそれを順に寛げてやった。そういえば服を脱がして着替えさせてやるのは初めてかもしれない。ルナトゥスも幼い体の頃は手伝ってもらうこともあったが、基本的には自分でやるよう躾けられてきた。
思い返すとふふ、と笑みが溢れる。
育児スキルゼロのくせに、幼児化した魔王を連れ帰り、助けたお人好しな男。
姉のハンナに頼りっぱなしなのに、自分を頼れとばかりに胸を張った調子のいい男。
それでも繋いでくれた手も抱きしめてくれた手も、最初から温かくて。
この温かい「ぽかぽかほわほわ」の正体を知りたくて、この家で暮らすと決めた。
今ならもう、その正体を知っている。
「──愛しているから……」
心の声が漏れ出る。それくらいジェイミーに愛を感じている。温かさも、欲する気持ちも全て、ジェイミーへの愛。
愛なんて知らなかった。けれど確かに感じる。今それは目の前にあり、ルナトゥスを満たしている。
「ジェイミー、愛してる」
酔っ払ってふにゃふにゃ寝言を言っているジェイミーの額に口付けた。
「ん……ルナ?」
気配を感じ、ジェイミーは薄く目を開けた。その先には、真っすぐに自分を見つめる、黒い瞳を揺らしているルナトゥス。
「どうした、ルナ。嫌な夢でも見て起きたか? おいで。抱っこしてあげる」
寝ぼけまなこのジェイミーには、瞳が濡れたルナトゥスが小さなルナに見えて、ベッドに転んだまま大きく手を広げる。
ルナトゥスはふふ、と笑って、抱きしめられるではなく、ジェイミーを抱きしめた。
「うっ、ルナ。おっきくなったな。おもっ、重い!」
「そうだ。もう小さなルナじゃない」
「ふぇぇ? 俺を潰す気だにゃあ?」
言いながらもジェイミーは笑っていて、とても楽しそうだ。
「潰さない。大事にする」
ルナトゥスがジェイミーの両の手首を取り、まずは唇へ、次に顎に、首筋に、喉仏に……順に唇を置いていく。
離れる時には優しい水音を立て、まるで小鳥が啄むように。
「ぁんっ……ルナ、くすぐったいよぉ……」
ジェイミーが身を震わせ、#捩__よじ__#る。白い体躯がなめらかな曲線を描き、その姿にさえ欲情するルナトゥスは、手のひらを肩から腹に滑らせた。
「あ、あぁっ……」
手のひらは太ももの間を分け入っていく。ジェイミーはまた身を捩り、太ももをぐっと締めてしまう。
それでもルナトゥスの手はもう、ジェイミーの昂りをしっかりと捉え、狭い隙間の中で上下に動いた。
「ら、らめ、ルナっ……」
「だめじゃない。これはジェイミーが教えてくれたこと。俺はそれをやっているだけだ」
酔ってぼんやりした頭の隅で記憶が蘇る。
以前ルナトゥスに自慰を教えるつもりが、請われてしてやったことがあった。
あの時のルナトゥスの淫らな表情が浮かぶと、ジェイミーの太ももは緩んだ。
ルナトゥスの手の中で、血脈を浮かせて快感に喘ぐ昂りが露呈する。
「や、やら。ルナ。恥ずかしいから見るな。な? また俺がやってやるから、ルナは触らなくていい」
力の入らない体を持ち上げ、ルナトゥスのものに触れようする。が、目に入った雄々しさに息を呑み、動きが止まってしまった。
「なん、なんら、これ。木の幹? 杭? 祈りの塔?)
見たことも聞いたこともない大きさに、ジェイミーは三度瞬きをした。
(前の姿の時も大っきいほうだとは思ったけど、これは……)
思わず生唾をゴクリと飲んでしまうが、今までジェイミーはルナトゥスの父であり兄だったのだ。恐れをなしてどうする。俺が導いてやらねば!
ジェイミーは覚悟を決めた。
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