酔った勢いもあったと思うが、ジェイミーは迷いなく顔を下ろし、ルナトゥスを口に迎え入れた。 　もちろんこんなことするのは初めてだ。自分がしてもらったこともなければ、男女問わず、夜の営みをした経験さえない。けれど今はこうするのが自然な流れに感じた。 　 （ルナが俺を愛してくれるように、俺もルナを愛したい） 「ふっ、んんっ、ルナ……ぁぐっ……んっ」 　ルナのは大きくて太くて硬い。口の中も喉の奥も苦しくて、お腹を空かせた動物みたいに涎が落ちてしまう。 　それでもルナが切なげに息を吐くから……ジェイミーの髪に触れている手に時々力がこもるから……もっともっとそうなってほしくて、必死にしゃぶりつく。 　けれどそのうち自分の下腹も熱くなって、すでに昂っていた芯の先から、透明な蜜を溢れさせていた。 （俺もイきたい……！） 　ジェイミーは自身の昂りに手を伸ばそうとした。 　その瞬間、すぐに手を取られ、再びシーツに縫い付けられる。 「！？　ルナ？　ルナの、まだ……」 　押し倒されると同時に、勢いよく口から抜かれたルナトゥスの猛りは凶悪なくらいに赤く、脈々と血管を浮かせている。 「もう我慢できない。ジェイミーの中に入りたい……」 「？　だから口の中に入れただろう？　俺達は男同士だからこれしか……ん、ぅむッ！？」 　唇を塞がれてなにも言えなくなる。あまつさえ、ルナトゥスの指が不浄な場所に当たり、驚きで声が詰まった。 　ジェイミーは足をばたばたさせて抵抗するが、ジェイミーより一体格が大きくなったルナトゥスを微塵も動かせない。 　ルナトゥスはジェイミーの口内の奥深くまで舌を差し入れながら、後孔の表面を指でくるくると回し撫でた。 （待て待て待て。そこをどうするつもりだ！） 　焦りながらも予想はついていた。ルナトゥスはここから自分の中に入るつもりなのだと。 「んーっ、んーっ！　ウナ(ルナ)、まえ(待て)っ。あうんあ(待つんだ)っ！」 　口を塞がれながらもやっと声が出て、ジェイミーは必死で抵抗する。 　ルナトゥスが怖いわけじゃない。でも、想像もつかない行為はとても恐ろしく感じ、目の端に涙が浮かんできた。 「……ジェイミー？」 　気づいたルナトゥスが唇を開放し、指の動きを止めた。それでとてもほっとして、ジェイミーはポロポロと涙をこぼす。 「ジェイミー！？」 　夢中でジェイミーを貪っていたルナトゥスは、興奮の吐息も冷めやらずに肩で息をしていたが、重ねていた体を離してジェイミーを見つめた。 「ごめ……ちょっと驚いて……本当にここを使うのか？　俺もルナとひとつになりたいって思うけど、裂けたりしないのかな？　ルナの……その……それ、おっきいの、入って、俺、死なない？　まだルナと一緒にいたいから、死ぬのはヤダ……」 　ジェイミーは小さく震えて訴える。 　 （なんと可愛く可憐な生き物か……） 　ルナトゥスも胸を震わせた。 　初めて対峙した日も体を震わせ、子鹿のようだったジェイミーだが、その数万倍可愛い。こうしていてなお頭の隅にあった「自分を導いて来てくれた大人のジェイミー」の像が、欠片ひとつ残さず消えていく。 「大丈夫だ。すでに誓ったが、絶対に痛くしないしジェイミーを傷つけない。俺はジェイミーを決して死なせない……いや、天に登るほどの快感を与える。約束する」 　ルナトゥスがジェイミーの頬を撫でる。 「だから、ジェイミーが欲しい」 　真摯な瞳。漆黒の中にはジェイミーしか映っていない。 （俺は前からルナのおねだりには弱いんだよな……こんな目で言われたら、首を横には振れないよ） 　 　ジェイミーはルナトゥスの手に手を重ね、静かに頷いた。 「……あっ」 　顔を自分で上げる間も無く顎に手が添えられ、唇を奪われる。 「んうっ、あぅっ……は、ああっ……」 「ジェイミー、愛してる」 　全身をくまなく撫で付けられ、紅い痕を置かれる。胸の先は何度も吸われ、捩られてじんじんしていた。 　もうどこを触られても体がひくついて、ジェイミーはあられもなく感じてしまう。 「はっ……あっ、ぁあっ……っ」 　あんなに怖かった後孔への愛撫も今や甘美で、ルナトゥスの指が表面を周回するたびに高い声が漏れた。 「ジェイミー、中に入れるから」 　ルナトゥスの指にはたっぷりの香油。魔力で出した、蜂蜜色をした温かい香油だ。 　丹念に塗り込められ、ゆっくりと入り口を広げられる感覚に、ジェイミーは体をしならせた。 　やがてちゅぷり、と音がして、自分の中を進んでくるのを感じるのに、少しも痛くない。それどころか指で中をこすられると、硬さを取り戻したペニスを裏からこすられるような不思議な悦楽を感じ、わけもわからないままに声を上げる。 「ひゃああぁん、ルナ、おかしいよ。どこ触って……！」 「ジェイミーの中だ。でも、まだこれからだ」 「ふぇ……？　──あぁっ！」 　中で指が曲げられたのがわかった。 　感じたことのない快感に襲われる。 「あっ、やっ、んんっ……なにこれ、ごりってしたぁっ！　目がチカチカするっ。腹が、熱くなるっ……！」 　 　言い終えたと同時に、ジェイミーは白濁を弾けさせた。 「はぁ、あぁん……ルナ………。気持ちい……」 　まだ目の前がチカチカして、ルナトゥスが光に包まれているように見える。眩しくて目を開けていられない。 「ジェイミー、もっと悦くする」 　ちゅ、とこめかみにキスが降りてくる。甘い声と唇に酩酊して意識が薄れそうだ。 （寝ちゃ駄目、俺もルナを気持ち悦くさせてあげたい……） 　 　そう思ってそろりと瞼を開いた時だった。膝裏を強く押され、尻が宙に浮いた。指が抜かれ、熱いものが後孔に張り付いたと思うとすぐ、ぐずぐずに蕩けていたそこに熱い杭が刺さった。 「あ、あぁっ……」 　痛くはなかった。襞を伸ばして進み、中をぎっちりと埋めてくるそれはとても重くて熱く、ジェイミーの意識をすべてそこに集中させる。煮えたシチューのように、腹の中をとろとろに溶かされていくような感覚に襲われた。 　ルナトゥスが腰を揺すり、さらに深くをえぐられると、どうしようもない切なさがこみ上げる。 　杭を前後に擦りつけられ、繋がっているぎりぎりまで引かれてまた突かれると、自分のものとは思えない高い声が喉から漏れた。 　 「ひ、うぅっ……ルナ……ルナトゥス、熱い、あついの、もっとして……！」 　気づいたら、ジェイミーはルナトゥスの動きに合わせて腰を揺らしていた。 　じゅぶ、ばちゅ、ぐちゅ。 　重なるリズムが淫らな水音を響かせ、鼓膜を揺らす。 　そうして二人は同時に快感を分かち合い、ジェイミーはルナトゥスの肌に、ルナトゥスはジェイミーの中に、互いの熱を注ぎ合った。