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第十八話 吸いつく唇
「いっ…‼︎」
清蓮は驚きと痛みで、思わず声を上げた。
清蓮が自分の胸元を見ると、光聖は傷口から膿を吸い出し、唾壺に吐き出しているではないか!
清蓮はなにをするんだと、反射的に両手で光聖の肩を突き飛ばそうとするが、光聖はその手を握って離さず、痛いのは最初だけだと清蓮をなだめる。
清蓮は落ち着いた声で話す光聖の言葉を信じてはみたものの、光聖が皮膚をつまんでは膿を出し、吸いつかれるたびに、ひりひりとした痛みが清蓮を襲う。
「いたっ…!」
痛むたび清蓮は身を捩り、光聖に握られた手を強く握り返す。
ひりつく痛みに、いつもは穏やかな清蓮も、この時ばかりはと怒りにも似た感情に支配された。
痛い、痛い、痛い!
痛くないって言ったじゃないか…。
少しだけだって…!
皮膚をつまみ上げては膿を吸い出す光聖を、もう見ていられないと清蓮は顔を背ける。
痛みで心臓の鼓動は速くなり、呼吸もその度苦しくなってきて、もはや自分ではどうにもならない。
清蓮の顔は痛みと恥ずかしさも相まって真っ赤に染まり、まるで大輪の花を咲かせた赤い牡丹のように優美ですらあった。
清蓮のその姿に、光聖は花を愛でるかのように清蓮を見つめたまま、もう痛くないからとささやく。
その言葉に嘘はなく、痛みが極限に達し後、少しずつ遠のいていった先に、今度はえも言われぬ恍惚が清蓮の体に湧き上がってくる。
あぁ、今度はなに…?
光聖は、握っていた清蓮の手を解放すると、代わりに清蓮の背中と腰に手を回し、軽く抱きしめるようにして、最後の一吸いと膿を吸いつくす。
あぁ…。
もうやめてくれ…。
身がもたない…。
やめて…。
お願い…。
「あぁっ…‼︎」
清蓮は、光聖が首筋に唇を這わせた時のあの不思議な感覚に襲われ、たまらず身を反らせて声をあげた。
光聖はぐったりとした清蓮を支えつつ、最後に皮膚をつまんで押すと、膿はすべて出たようで、代わりに血が滲み出し、ぽたぽたと流れ落ちたその血は、清蓮の肌衣を赤くじわりと染めた。
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