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第十五話
本文
清蓮にとって、光安から語られる話の全てが驚きの連続であった。
清蓮は光安から光聖のことをもっともっと聞きたくてたまらない。
だが光聖にも会って話がしたい。
清蓮にとって、この歯痒い思いは如何ともしがたく、心の平静を保つのに苦労した。
「清蓮。光聖とどうして会えなくなったか、君が仙術を諦めることになったか知りたいかい?それとも一刻も早く光聖に会いたいかい?また機会があれば話してあげてもいいしね、どうする?」
光安は清蓮のはやる気持ちを察してか、清蓮に選択肢を与えてくれた。
清蓮は迷いに迷った。
それでもしばらく考えた後、清蓮は、
「先生、教えてください。どうして長い間光聖に会えなかったのか、どうして私が仙術を諦めなければならなかったのか?高熱を出したことが本当の理由でないなら、私は知りたいです!」
光安は清蓮ごそう答えるだろうと思っていたのだろう。
さほど驚く様子もなく、
「そうか…。ならば話そう。これから話すことは、君が知りたい二つのことの答えになるだろう」
「…お願いします」
光聖…
もう少しだけ待ってて…
後で、必ず君に会いにいくから…
清蓮は光聖との再会を後回しにするようで、心が痛くなったが、それでも知りたいという気持ちを抑えることはできなかったのだ。
思い出したくても思い出せない記憶があるならば、知りたくても知る術をもたないなら、誰かに聞いて教えてもらうしかない。
光安は清蓮の言葉を受けて、口を開いた。
修練場でのある日。
清蓮と光聖は散歩がてら森に行くことにした。
友泉も行きたがったが、あるちょっとした出来事がきっかけで怪我をしてしまい、一緒に行くことは叶わなかった。
「あんまり遠くまで行くなよ。黒神の森に入ったら、出て来れなくなるから」
友泉は清蓮に気をつけるよう忠告し、光聖に向かってつい憎まれ口をたたいてしまう。
「おい、ちびっ子。清蓮に迷惑かけんなよ」
「ちびっ子じゃない!ちゃんと光聖という名がある‼︎」
「本当に口だけは達者だな!すぐ泣くくせに!」
「口が達者なのは、お前と違って賢いからだ!それに私は泣いたりなんかしてない!」
友泉は嘘つけとばかりに、光聖が川や海で溺れて泣いたことを話すと、光聖は悔し紛れに、
「あれは涙じゃない!目から鼻水が出ただけだ!絶対に涙なんかじゃない‼︎」
光聖はそう言って友泉にくってかかった。
この二人はどうにも相性が悪いようで、ことあるごとに互いに憎まれ口をたたいていたのだが、さすがの清蓮も光聖の負け惜しみに苦笑いせざるを得ない。
光聖…。
目から鼻水って…。
清蓮はやれやれといった表情でため息をつき、
「二人ともやめなさい。君たちはなにかというと喧嘩ばかりして…。あー、それとも本当は喧嘩するほど仲がいいってことなのかな?」
清蓮は形の良い、美しい目を二人を見つめたかと思うと、ぱちっと片目を閉じて、二人をからかう。
清蓮は二人が反目しあっていても、心底嫌い合っているわけではないことは十分にわかっていた。
そんな清蓮の言葉を聞いた二人は声を揃えて、
「仲良くない‼︎」
「仲良くない‼︎」
清蓮は可笑しくて声を立てて笑い出す。
二人とも不機嫌極まりなかったが、清蓮があまりにもおかしくて仕方ないと笑っているのを見ているうちに、友泉は光聖のことなどどうでもよくなってしまった。
「清蓮…。そんなに笑うほどのことか?ったく、悪かったな、光聖。清蓮を頼んだぞ」
清蓮と光聖に言った後、光聖の頭をぐしゃぐしゃっと撫でてその場を立ち去った。
光聖も清蓮の笑顔を心ゆくまで満喫したせいか、こちらも友泉との他愛ない口喧嘩などどうでもよくなっていた。
「さぁ、行こうか、光聖。探検しに行こう!」
清蓮は光聖の手を差し出す。
「うん!」
光聖はきらきらした目で清蓮を見つめ、差し出された清蓮の手をぎゅっと握る。
二人の手が重なり、その温もりが一つになると、二人の心がふわりと浮き立った。
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