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第二十四話 異変

二人が眠っている部屋の小窓の隙間から薄明かりが部屋の中に差し込み、遠くで鳥たちが挨拶を交わしているのが聞こえてくると、清蓮は今度こそ朝が来たと思い、目を擦りながら呟いた。 「んー、よく寝た…」 「うん…。君はとても気持ちよさそうに寝ていた…」 温かく、心地よい声が清蓮の耳をそっと撫でる。 「よく寝たよ…。こんなにぐっすり…。しかもなんだか…とても安心して眠れたんだ…。こんなに気持ちよく眠れるなんて…君のおかげだ…」 清蓮はなんとなしに返事をしたが、 「んっ…!」 清蓮ははっとなって目を開けると、目の前には光聖の襟元が見える。 あぁ、そうだ… 私は…! 清蓮はすっかり忘れていたのだ。 光聖の腕の中で眠りについたことを。 清蓮は躊躇いがちに顔をあげ、光聖を見る。 清蓮は朝一番に光聖の美しい顔を見ることができて、なんていい一日の始まりだろうと思った。 「光聖…、あの…おはよう。君は…眠れた?」 「少し…眠ったかな」 「少し?私がいたから眠れなかったんだね!そうだろう⁈」 「私のことは気にしなくていい。君がよく眠れたと言うならそれが一番だ」 「よくはないよ、光聖。私が邪魔で眠れなかったんだろう?寝台に男二人じゃ狭いから…。私が夜中に目が覚めた時に隣の部屋に休めばよかったんだ。そうすれば…」 清蓮が申し訳ないと謝り、光聖から身を離そうとすると、光聖はすかさず清蓮の身をぐっと引き寄せ、再び自分の腕の中に清蓮をおさめる。 光聖はそれでは不十分と、それはそれは自然な動きで清蓮の腰に手をまわし、さらに清蓮の体を引き寄せた。 先ほどよりも二人の距離は縮まり、一分の隙間もないほどに二人の体はぴたりと重なった。 そう…ぴったりと。 清蓮の顔は光聖の胸に埋もれ、胸も腰も足も… まるで光聖と一つになったかのように… 清蓮は「あっ!」と小さな声をあげるが、あまりにも一瞬の出来事に頭が混乱し、全く身動きできない。 このままではいけないと理性より本能が働いて、その場から離れようと清蓮を突き動かし、清蓮はあらん限りの力で光聖から離れようとした。 しかし光聖は清蓮よりも一回り大きく、力も強かった。 まして彼は神だ。 清蓮は修練も積んで武芸に長けていた。 だが所詮人間だ。 光聖は決して力いっぱい抱きしめていたわけではないが、清蓮は逃れる術を持たなかった。 光聖は清蓮を自分の腕の中におさめると、微笑みながら清蓮の言葉を否定する。 「清蓮、そんなことで謝る必要はない。私は正直眠らなくても大丈夫なんだ」 清蓮は光聖に抱きしめられ、顔から火が噴き出しそうだ。 一方光聖は清蓮が自分を心配してくれたことがよほど嬉しかったのだろう。  「でもそう思ってくれるなら…。そうだ、君さえよければ…毎晩こうするといい!」 「毎晩⁈」 「うん。そうすれば毎晩よく眠れるだろう?」 「そ、それはそうだけど…。でも…、でも…そんな…」 毎晩なんて…身がもたない… 誰かとこんなに体が密着することなど経験したことがない清蓮は、次第に体中が火照ってくるのを自覚した。 逃れられない… でも…でも… 体の火照りはおさまるどころかますます燃えるように熱くなる。 そして清蓮は今までにないある変化を感じていた。 あっ… あっ…! 清蓮は自分の体のある部分が経験したこともないくらい、燃えるように熱くなっているのを感じた。 あぁ… なに…これ… 清蓮はまともに息ができない。 どうやら清蓮の中心部はとんでもないことになったようだ。 清蓮はどうすればいいかわからない。 自分の体なのに、中心部だけ自分のものではないようだ。 あぁ… 誰か… 助けて…‼︎ すると光聖が清蓮の異変に気づいて声をかける。 「清蓮、大丈夫?」 清蓮は声をかけられると、体がびくんと痙攣したようになる。 「大丈夫…。あの…、あの…急で申し訳ないんだけど…ご不浄に行きたくなって…。その…貸してもらえないだろうか?」 「あぁ、もちろん。でもなんだか具合が悪そうだけど、大丈夫?」 「大丈夫、大丈夫…。恥ずかしい話、本当に急に行きたくなってしまって…。はは…恥ずかしい」 清蓮は光聖にご不浄の場所を教えてもらうと、一目散にご不浄へ走って行った。 清蓮はご不浄に着くと、そこは清蓮のために用意されたかのように真新しかった。 清蓮は急いでご不浄の一つに入り、鍵を閉めた。 乱れた呼吸をどうにかしたかったが、それよりもなによりも… どうすればいい? どうすれば⁈ 清蓮は切羽詰まり、どうしたものかとおろおろしてしまう。 なんとかしなければ…! 清蓮は着ていた衣服の隙間からそっと手を入れ、自分の中心部に恐る恐る触れてみた。 清蓮はわかっていた。 自分の体がどうなっているのか。 どう変化しているのか。 だが実のところ、清蓮はわかっていなかった。 清蓮の中心部は…、彼の一物は…それはそれは見事なまでに大きく、いまにもはち切れそうになっていたのだ! 清蓮はさらに下衣を脱いだ。 触れただけではまだわからなかったからだ。 清蓮はやはり恐る恐る自分の一物を見た。 あぁ…なんてことだ…! こんなに… こんなことに… 清蓮は頭がおかしくなりそうだ。 なんとかしなければ…! 清蓮はその時ふと思い出した。 遊郭につれていかれた時、自分が男だと見破られないよう苦し紛れに一物を股で挟んで隠したことを! そうだ! あの時みたいに股に挟んで、それから心を鎮める瞑想をして…、そうしたら落ち着くはずだ… 清蓮は手で自らの一物を股に挟もうとそっと触れた。 だが清蓮は自らの選択が間違っていることに気づいた。 彼の一物は触れた瞬間、彼の意思に反してさらに膨らんで、落ち着くどころか、天に向かって反り返ってしまったのだ! 加えて一物に触れた清蓮はびくんとなって思わず、「あ…っ!」と小さく鳴いてしまった。 あぁ…。 どうしてこんなことに… 私は…私の体はどうなってしまったんだ… 清蓮は戸惑うばかりだ。 清蓮…、清蓮… 落ち着け… 落ち着くんだ… 清蓮は呪文のようにそう唱えて、なんとか心と体が静まるのを待った。 しばらくすると、清蓮は一人悪戦苦闘しながらも、なんとかやり過ごせそうだと思い始めた頃、 「清蓮?大丈夫?」 清蓮がなかなか部屋に戻ってこないので、光聖が様子を見に来たのだ。 「光聖⁈」 「うん。なかなか戻ってこないから…。心配になって…。息が乱れてるけど…大丈夫?」 「あ、ありがとう…。だ、大丈夫だよ…」 清蓮はまた落ち着かなくなる。 「でも、とても辛そうだ…。私に手伝えることはない?」 「な、ないよ!手伝って…もらうような…ことは…なに一つないよ!」 清蓮は平静を保つために、乱れた呼吸を無理やり整えた。 それでも光聖は、清蓮のことが心配な様子で、 「清蓮…。でもやっぱり辛そうだよ。私に見せて…すぐによくしてあげるから」 「見せる…⁈いやいや、本当に…大丈夫だから。間に合わないんじゃないかと思って…走ったんだ。久しぶりに…走ったから…息切れしたり…、眩暈がしたり…。はは…、それだけだよ…」 清蓮はなんとか取り繕ってみるが、光聖は引き下がらない。 「走ったの?眩暈がしたの?君は三月も眠っていたんだよ。まだ体力も万全じゃないんだから。清蓮、やっぱり見せて。楽にしてあげるから。君の体を楽にしてあげられるのは私だけだよ、清蓮。知っているだろう?」 清蓮は自制心を振り絞って、 「光聖…。お願いだ…。部屋で待っていてくれ…。お願いだ…頼む」 清蓮は懇願するように光聖に伝えると、光聖はこれ以上のやりとりは良くないと思ったのか、素直に清蓮の言葉に応じた。 「わかった、清蓮。部屋で待っている。でも…もしなにか必要だったら、遠慮なく言って。私は…君が喜んでくれるのなら…なんでもするから…」 光聖はそう言って部屋に戻って行った。

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