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第二十話 梅雪

「梅雪!梅雪じゃないか!生きてたんだな!無事だったんだな‼︎」 驚きよりも嬉しさが優った途端、友泉は込み上げてくる感情を抑えることができず、梅雪を抱きしめた。 小柄な梅雪は友泉に抱きしめられ、息苦しいことこの上なかったが、それでも友泉同様胸が熱くなる思いでいっぱいになる。 「はい。無事ではなかったのですが、あるお方に助けてもらって、こうして生きながらえております」 梅雪はゆっくりと友泉から体を離すと、小さな声でそう言った。 「助けてもらったって、誰に?宮廷の者か?」 「いいえ、違います!成人の儀で清蓮様を助けたあのお方です!白神様です‼︎」 「どういうことだ、梅雪?成人の儀で清蓮を助けた男のことか?その男がお前を助けたのか?なんでいま白神様が出てくるんだ?」 友泉は梅雪の言っていることが皆目見当がつかない。 梅雪も友泉に会えた嬉しさで、自分が思っている以上に興奮してしまったらしい。 一息ついて、改めて説明した。 「申し訳ございません、友泉様。嬉しさのあまり、我を忘れてしまいました。順を追ってご説明いたします」 「わかった。立ち話もなんだ、座って話そう」 友泉は梅雪に座るよう勧め、自分も座った。 梅雪は心の中で時を戻しながら、語り始めた。 「清蓮様と国王陛下が口論なさった後、国務大臣が清蓮様に声をかけられ、お二人は大臣の執務室でお話をされました。その後清蓮様はご自分の部屋に戻って来られました。私は清蓮様の部屋で一人お帰りを待っておりましたが、そこで国王陛下と口論なさったことや国務大臣と話をしたことを私に打ち明けて下さいました」 梅雪は理路整然と語った内容は、すでに友泉も国務大臣から聞いて知っていたことだ。 友泉は静かに頷き、話を続けるよう促す。 「そのすぐ後のことでございます、追っ手が部屋に入って来たのは。あまりにも突然のことで。無礼にも武装した数人の男たちが入って来て、その中の一人が清蓮様を捕えると、国王夫妻をはじめ多くの人々を殺した犯人だと……。謀反人として捕えると言ったのです」 梅雪はその当時の様子を思い出して、見るからに苦しそうな表情になる。 「梅雪、大丈夫か?」 友泉は梅雪を思いやって、優しく声をかける。 「友泉様。ありがとうございます。私は大丈夫にございます。ぜひ聞いていただきたいのです」 「わかった。話を聞こう」 「清蓮様も私も、その他の者たちも、皆驚きました。清蓮様がそんなことするわけございません!なにかの間違いだと皆が申しました。しかし武装した男たちは命令だと言って清蓮様を連れて行こうとしたのです。近侍の一人が清蓮様を助けようと男たちの間に割って入ったのです。そうしたら……、そうしたら突然、男はその近侍を斬り殺したのです!」 梅雪は震える手を握りしめ、込み上げる恐怖を抑えつけようとした。 友泉は梅雪の手を強く握ると、梅雪はたまらず嗚咽する。 友泉はなにも言わず、ただそばに寄り添った。 手に負えない感情を手なづけるのは難しい…… 吐き出したほうがいいだ…… 友泉は待った。 梅雪が落ち着きを取り戻し、また語りだすまで。 「お見苦しいところをお見せして、申し訳ございません。ちゃんとお話ししませんとね」 梅雪はぎこちない笑みを浮かべながらも、再び話しはじめた。 「男たちが斬りかかってきたので、そばにいた近侍たちは皆応戦しました。清蓮様も応戦しようとしましたが、私はそれを止めて、秘密の回廊へ行くよう進言したのです。友泉様はご存知ないと思いますが、王族とごく限られた者だけが知る回廊がございまして、人に見られることなく部屋を行き来ができるのです。その回廊一つは宮廷の外へと繋がっていて、人知れず外に出ることができるのです」 「秘密の回廊……」 友泉は小さい頃から宮廷に出入りしていたが、そのようなものがあるとは知るはずもなかった。 だがありそうな話だなとも思った。 梅雪は話を続けた。 「清蓮様は私にも付いてくるようおっしゃいましたが、私はお断りしました。清蓮様の足手まといにはなりたくなかったのです。清蓮様が秘密の回廊に入って行ったそのすぐです。私も男に背中を斬られたのです!背中が焼けるような激しい痛みでした。私はその場に倒れ込むと、男は私の頭をつかんで床に打ち付けようとしました。その時です!あの方が現れたのは‼︎」

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