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第三話

「光聖!いつの間に来たの?」 清蓮は光聖に問いかけてはみたものの、小さく笑いながら首を横に振った。 光聖はいつもお見通しだ…… 私がここにいることなんて、簡単にわかるはず…… 光聖は見目麗しい顔に涼しげな、だがどこか温かみを感じさせる笑みを清蓮に向けている。 「うん、なかなか君が帰ってこないから……。待ってたけど気になって探しに来たんだ」 「ごめん。戻ろうと思ったんだけど、ちょっと散歩したくなって……。道なりに歩いていたら、ここに着いたんだ」 清蓮はそう言いながら、「ねぇ、光聖、一緒にあっちに行ってみない?」と湖畔の辺りを指し示しながら光聖を誘うと、光聖は「うん」と短く答えた。 二人は互いに肩を並べ、他愛のないおしゃべりをしながら歩いていると、程なくして湖畔の辺りに辿り着いた。 清蓮は到着するなり、感嘆の声をあげた。 「あぁ!さっきも思ったんだけど、本当に綺麗だ!こんなに透き通って……」 清蓮は興奮気味に光聖に話しかけたが、光聖の横顔を見上げ見た時、改めてその美しさに息を飲み、言葉を失ってしまった。 そして光聖から目が離せなくなった。 清蓮に話しかけられた光聖も光聖で清蓮を見つめ返すと、やはり清蓮から目が離せなくなる。 「うん……。すごく綺麗だ……」 光聖の言葉と声は、湖の美しさを讃えるにはどことなく色香が漂い、熱を帯びているように聞こえた。 清蓮はまるで自分に言われているかのような錯覚を覚えてしまう。 湖が綺麗だって言っただけなのに、なにを勘違いして……、まったく! 清蓮は気取られないように、平静を装って小さく微笑み返すと、湖に視線を移した。 光聖も視線を湖に移すと、二人はなにを言うでもなく、時が流れるままに身を任せていた。 清蓮はいつまでも、いつまでもこの美しい景色を見ていたいと思った。 光聖と二人で見ていたいと思った。

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