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第十三話話

駆けつけた光安が広場に来ると、友泉と門下生が地面に倒れているのが見えた。 友泉も門下生も互いに殴り合ったせいで、恐ろしいほどに顔は赤く晴れ、目はただれ、体もあざやら切り傷があちこちにできており、見るも無惨な状態であった。 友泉はかろうじて意識を保っているようだが、門下生の目は上天し、口から泡を吹いて気を失っていた。 門下生たちは固唾を飲んで二人の喧嘩を遠巻きに見守っていたが、二人が同時に地面に吸い込まれるように倒れると、駆け寄って二人を取り囲んだ。 光聖も二人を囲む人の輪に近づいたが、彼は倒れている門下生には目もくれず友泉だけを見つめていた。 門下生たちは二人を介抱しようとした時、どこからともなく光安に仕える男たちが現れた。 男たちが地面に倒れている門下生をするに向けて手をかざすと、門下生の体は宙に浮き始めた。 男たちの一人が光安に一礼すると、他の男たちと共に宙に浮いた門下生を連れて修練場に戻って行った。 二人の喧嘩を見ていた門下生たちも光安に一礼すると後に続いた。 広場に残ったのは、友泉、光聖と光安の三人だけとなった。 友泉は地面から半身を起こし、男たちに運ばれていく門下生に向かってどこまでも悪態をついていた。 「もうそこまでにしなさい、友泉」 見かねた光安が友泉を諭す。 その声は深く優しくが、幾ばくかの威厳と威圧感もあった。 しかし、友泉は意に介さない。 「なぜですか、先生!あいつは酷いことを言ったんですよ!先生はあいつが名凛になんて言ったか知らないからそう言えるんですよ‼︎」 「知っているよ。彼は言ってはいけないことを言ってしまった。それは決して許されないことだ」 光安はそう断言した。 「だがね、君もよくない。君の怒りは正当なものだが……、それでもやりすぎだ。怒りにかまけてことを荒げてはいけない。気をつけないと。君は将来……」 光安が言い終わる間もなく、友泉が話を遮る。 「あいつを殴ったこと、これっぽっちも悪いと思わないし、後悔もしません!名凛を傷つける奴は許さない、それだけです‼︎ 」 光安は重いため息をつくと、そばにいた光聖と目があった。 光聖は光安の憂いをよそに、視線を友泉に向け、赤く腫れ上がった顔と無惨な姿を見つめていた。 光安はもう一度重いため息をつくと首を横に振りながら、その場を去った。 友泉は収まらぬ怒りを吐き出したい衝動に駆られ、地面を拳で何度も叩いた。 「くそったれ!」 友泉の打ちつけた拳はみるみるうちに赤く腫れ上がり、あまりの痛さに後悔の念が押し寄せた。 友泉は口を尖らせ、赤く腫れた手に息を吹きかけたが、それで痛みが引くでも治るでもない。 友泉の怒りは容易に消えることはないと分かっていたが、この場にいつまでも止まっていても仕方ない。 友泉は修練場に戻ろうと痛む体を摩りながら立ちあがろうとした時、小さな手が友泉の目に前に差し出されるのが見えた。 友泉はてっきり清蓮が手を差し伸べたのかと思い、その手の先へと視線を走らせると、赤く腫れ上がった目から見えたのは清蓮ではなく光聖であった。 光聖は友泉と目を合わせてもなにも言わなかったが、手を差し出したまま、友泉の出方を待っている。 友泉は腫れていない方の手をゆっくりと光聖に差し出すと、光聖はその手を握り、友泉を地面から引き上げだ。 「ありがとな……。ちびっ……、光聖」 「君は……、もう少し考えてから行動した方がいい」 友泉は握っていた光聖の手を振り払って、文句の一つでも言い返そうとした時、光聖は真面目な顔で友泉に言った。 「でも、君のそういうところ、悪くないと思う」 「……⁈」 友泉は返す言葉が見つからなかった。 まさか光聖にそんなふうに言うとは思ってもいなかったからだ。 友泉は照れを隠すように頭を掻くと、今度は友泉がら振り払った手を光聖の前に差した。 光聖はそっとその手を握りると、皮肉を込めてこう言い放った。 「それにしても君のその顔、相当ひどいよ!美しさのかけらもない‼︎」

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