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第十七話
翌日、名凛は乳母に一人でお散歩したいと伝えると、乳母は余計なことは一切言わず、ただあまり遠くまで行かないようにと優しく声をかけ名凛を送り出した。
名凛はいつでもどこにでもついてくる乳母が来ないなんてと思ったが、もしかしたら光安先生が昨日のことを乳母に話して、ついでに自分の好きにさせるよう乳母に言ってくれたのかも知れないとも考えた。
名凛はあてもなく気の向くまま森の中を歩いていたはずだったが、何故か行き着いた先は昨日光安と変な男がいたあの屋敷だった。
名凛はあの変なお調子者に出くわすと嫌だなときょろきょろと周りを見渡したが、屋敷は昨日と同じく人の気配がなくひっそりとしていた。
「なんだ、いないのね。つまらない」
名凛は修練場に引き返そうかと思ったが、少しだけ屋敷の周りを探索してみようと考え直した。
名凛は人がいないことをいいことに屋敷をあちこち見て周った。
昨日屋敷にたどり着いた時、なんの変哲もないこじんまりとした屋敷だと思ったが、よくよく見ると友安国にはない繊細な細工や装飾が至る所に施されており、異国の様式美がそこにあった。
「なんて素晴らしいのかしら!よくこれだけのものを……。昨日は全然気が付かなかったわ。あのお調子者のせいね!」
名凛はぶつぶつ言いながらも、自らのあくなき探究心と好奇心を満足させるべく時間を忘れて見入っていた。
「それにしても、これはなんて言う造りなのかしら。前に読んだ本にあったと思うんだけど。思い出せない……」
「教えてやろうか、お嬢ちゃん?」
後ろから急に声をかけられた名凛は一瞬両肩を縮め、小さな悲鳴をあげた。
名凛はばつが悪そうに振り返ると、名凛の言うあの変なお調子者が、いたずらっこような笑みをたたえて立っていた。
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