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第5話
ガサガサと、乾いた音が聞こえた。
何やら、変な声も聞こえる。
何事だ、と思い薄っすら目を開けると。
「え? え?」
ベッドの上に座り、眉間に薄っすら皺を寄せておろおろする彼が目に飛び込んできた。
「え? あの、えっと」
彼がシーツで体を隠すようにして戸惑っている。
その顔はどこか怖がっても見えて。
別に隠す必要ないでしょ。
裸じゃないんだから。
……パンツとTシャツだけにはなってもらったけど。
「どうした?」
俺もベッドから体を起こす。
「いや、その……」
不安に揺れる彼の視線が下に落ちた。
「……その、なんだけどさ……」
「もしかして、やったと思ってる?」
「ぅえ!」
変な声。
……ちょっと面白い。
「いや、だって、だってさ」
彼がそっとシーツの中を覗く。
「俺、外着でベッドに上がるの無理派だから」
だから昨夜、彼のジーンズを脱がせて。
予備で持って来ていたTシャツを着せた。
変な気は起こして、……ない。
何となく体の具合を確かめた彼は。
やっとほっとした表情を見せた。
「だよね」
と、可愛い笑みを俺に向ける。
でも、口元が少しだけ歪んでいて。
「ちょっと、シャワー借りるね」
そう言って彼はそっとベッドを抜け出し。
逃げるようにバスルームに向かった。
なんか事後みたいで興奮するからやめてください。
「でも、……どうやってここまで来たのかな」
ここはどこなんだろう?
彼が濡れた髪を拭きながら、きょろきょろと部屋を見回すので。
「俺が泊ってるホテル」
と答えた。
すると彼は、そっか、と小さく呟き。
見回すのをやめた。
彼がそっとベッドの端に腰を下ろす。
「多分、だけど、俺、自分でここまで来てないよね?」
「うん」
俺は彼の隣に移動しながらしっかり頷いた。
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