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第7話
「そっか。ごめん、俺、急に寝ちゃったんだ」
「結構限界来てたんじゃない?」
「……うん」
彼が白状するみたいに頷く。
「なんで、もう帰ろうって言わなかったの?」
それは俺も一緒だけど。
でも、彼の気持ちは多分、俺とは違う。
俺の場合。
もし、彼がそれを許してくれるなら。
眠気になんか負けず一緒にいたい。
そう思って言い出さなかったんだから。
「もしかして、まだ嫌な夢見るの?」
「ううん」
彼はちゃんと答えてくれる。
でも、自分から理由を話そうとはしない。
「……ちゃんと、毎日寝られてるよ」
うん、それは良かった。
昨晩もよく寝てたし。
でも、理由にはなっていない。
どうしよう。
こんなこと、しつこく尋ねたくない。
責めてるみたいになるし。
楽しかったからタイミングが分からなくなったって言ってくれたら納得するのに。
彼はそうとも言わない。
どうする?
悩んでいると、彼が急に唸り声を上げて、頭を抱えた。
「どうした?」
頭が痛いのかと心配になり、彼に顔を寄せる。
でも、彼はなかなか唸り声の理由を語ってはくれない。
「あぁ~~」
まだ声を零すので。
「どうしたんだよ」
懲りずに尋ねる。
すると彼は、浅い呼吸を何度か繰り返して。
大きな溜め息をついた。
彼が頭から手を離す。
目はどこか虚ろだ。
病んだ、というより、しょんぼり。
そんな言葉が合う。
「……そのさ」
彼が、ポツリポツリと語りはじめた。
「俺、昨日楽しかったんだ」
「うん」
「特に話さなくても気まずいなって思わなくて」
自然な空気が流れて。
ただ時間を共有するだけのことが気楽で。
「……なんか、いつまでもこうしていられたらなって気になって」
でも、時間は刻一刻と過ぎていく。
だんだん日は落ち、暗くなる。
「するとだんだん『どうしよう、どうしよう』って思いはじめて」
「なんで?」
「ん……」
彼がまた、俯いて黙り込んでしまった。
「なんで?」
もう俺がしつこいってことぐらいは分かっているだろう。
俺が遠慮なく同じ言葉を繰り返すと。
彼はまた小さな溜め息をついた。
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