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第124話

「んぁ……ッ、ゃめッ……、ぁんん……」 「ルイと呼んでくださらない意地悪な唇は、ずっと塞いでおきましょう」  そしてその意地悪な唇に愛を教え込むのだ。じっくり時間をかけて、いっそ執拗なほどに何度も何度も。まるでもう意地を張るのも馬鹿らしくなるほどに愛を教え込めば、いつかはアシェルもわかってくれると信じる無垢で残酷な幼子のように。 「ゃめ、ろッ……ぁぅッ……、んんッ、……んぁッ」 「ルイと呼んでください。さぁ」  誰がッ! と睨みつければ、仕方ないとばかりに再び唇を塞がれる。真っ赤になるほど唇が吸われ、啄まれ、舌を差し込まれて、今まで口づけなどしたことの無かったシェルは翻弄されるばかりだ。もはや理性どころか口を閉じて歯を食いしばるだけの力も無い。だらしなく開かれたままの唇は容易に舌の侵入を許し、溢れた唾液が顎をつたう。涙で視界もぼやけ、頭もボンヤリと霧がかった。 「アシェル。アシェル。ルイって呼んでください」 「んぅッ……、わか、ったッ……、んッ、わかったからッ、離せ、ルイッ!」  何度も何度も耳元で囁かれ、アシェルは耐えられないとばかりに叫ぶ。そんなアシェルに満足したのか、ルイは微笑みながら唇を離し、寝台の上に転がっていたモノクルを取ってアシェルの目にかけた。

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