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第132話

 アシェルの真白な髪に似合うのはどんな色だろう。彼の瞳は金色だから、同じ金の装飾も良いかもしれないが、あまり金を多用しているものだと重いだろうか。ならば青は? 緑も似合うだろう。臙脂や、あるいは柔らかな桃色も良いかもしれない。ルイはそんなことを嬉々として考えていたが、アシェルはボンヤリとリボンを眺めるだけで相変わらず喜びを見せはしなかった。 「そんなことしなくても――」  本当は、髪なんてどうでも良かった。長く伸ばしているのも、短いと寝癖がついたら整えるのに手間がかかって面倒だからとか、長ければ一つに結んでいればそれなりに見えて楽だからといった理由であって、そう特別な思い入れがあるわけでもない。リボンである必要もないくらいなのだから、そんなことに金をかける必要はないとアシェルが振り返った時、小さくノックの音が響いた。 「旦那様、アシェル様、お時間です」  扉の向こうから聞こえるエリクの声にボンヤリと、もうそんな時間か、とアシェルは瞬く。返事をすることもなくボーっと扉の方を見つめていれば、ルイが囁くように声をかけて車椅子を押した。

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