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第133話

「今日のデザートは料理長が食材のひとつひとつに拘って作った特別製だそうですよ。楽しみですね」  アシェルの興味をくすぐるように、殊更好きな甘いものの話をする。そうすればボンヤリとしたり緊張したりと忙しいアシェルの表情がほんの僅か綻んだ。  元々お茶会や舞踏会といった集まりが嫌いなアシェルだ。その上、今回は位を退いたとはいえ公爵であったリゼルに、さほど親しくもないソワイル夫妻、気を遣うばかりのカロリーヌ夫人とノーウォルト夫妻、そして決して失礼が許されない国王夫妻が参加する。身内のお茶会とは名ばかりのそれにアシェルが緊張するのも仕方のないことであるが、それでもせっかくのお茶会なのだから少しでも楽しんでもらいたいとルイは思う。しかし、そんなルイの気遣いも虚しく、エリクが扉を開いてホールに入った瞬間に、アシェルの表情は凍り付いた。 「皆様ようこそ。よくお越しくださいました」  アシェルと同じ光景がルイの目にも見えている。しかしルイはいつも通り口元に笑みを浮かべながら、集まっていた彼らの方へ近づいた。

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