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第134話

「本日はお招きいただき、ありがとうございます。また、アシェル殿とのご婚約、誠にめでたい。おめでとうございます」  最初に挨拶したのは白い髭を綺麗に整えたソワイル侯爵だった。隣では夫人が、少し後ろではジーノとカロリーヌが揃って礼をしている。その姿にようやく戻ってきたアシェルは動揺を悟られぬようにしながら礼を返した。だが、求婚された式典で盛大に拒絶を示していたアシェルは何と返したらよいかわからない。どうしよう、と回らぬ頭で必死に考えていれば、横に移動したルイの手が安心させるようにポンポンとアシェルの肩を撫でた。 「ありがとうございます。若輩ですが、ソワイル卿のように仲睦まじい夫婦になれるよう努力します」  当たり障りのないルイの言葉ではあるが、ソワイル侯爵も夫人も嬉しそうに微笑んでいる。苦手だ嫌いだと舞踏会やお茶会から逃げ回っていたのは同じであるのに、ルイはニコニコと微笑みながら卒なく言葉を交わしていく。流石は公爵位を継ぐだけはある、とボンヤリ思っていれば、リゼルが来たことによって話はそちらの方へ流れていった。爵位ではルイの方が上であるが、年齢で言えばリゼルの方がソワイル侯爵と近い。積もる話もあるだろうと気を利かせたのだろう、ルイがアシェルの車椅子を押した。

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