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第145話

「別荘にお招きするのは構わないのですが、ダンスパーティーはしません」  どうして、と言わずとも理由は明白だ。ルイが所有する別荘で、アシェルが参加しづらいものなど開催するはずもない。何もダンスでなくとも、今日のような茶会や、あるいは夜会などで良いのではないかとジーノが口を開こうとした時、メリッサはキョトンとして首を傾げた。 「あら、アシェルのことでしたら大丈夫ですわ。この子は少し甘えたなんですの。でも、ちゃんと先生に習って練習すればダンスもできますわ。公爵様と結婚するのですもの、アシェルも今までのように我儘を言わず、努力しますわ」  義姉としてちゃんと練習はつきそう、と満面の笑みで言うメリッサに皆の時が止まる。彼女はアシェルの足がどうなったのか知らないのか? と疑問が浮かぶ中、メリッサはあれこれと頭の中で予定を立て始めた。 「雨季は外に出るのも億劫ですが、それを逆に利用したら良いんですわ。雨季の間に練習すれば、きっとどうにかなりますわよ」  そうすれば公爵もアシェルとダンスをすることができる、なんて楽しそうに語るメリッサにカタカタとフィアナの手が震えた。それを目にした瞬間、正気に戻ったアシェルがルイの袖をクイクイと引っ張る。 「公爵、僕は――ッッ!?」  気にしないから流してほしい。そう口にすることも叶わず、アシェルの唇はルイのそれに塞がれた。

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