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第174話

「おがぁざまぁぁ~、おリボンがぁ~」  せっかく可愛らしいドレスを着ているというのに、フィアナは大粒の涙を零しながら顔をグシャグシャにしてやって来た。その手にはドレスとお揃いの可愛らしい桃色のリボンが握られていて、どうやら侍女にしてもらった髪型が思ったものではなくて子供らしい癇癪を起したらしい。 「はいはい、フィアナ。そんなに泣いてはせっかくの可愛い顔が台無しよ? さぁ、こちらにいらっしゃい。お母さまが結ってあげるわ」  あまり社交の場に行きたがらず、着飾ることにも興味の無いアシェルを宥めすかし、己の好みのままに着飾らせていたミシェルが苦笑しながら末娘を手招く。しゃくりあげながら母に近づき、こうしたい、あれが嫌だと拙い言葉でフィアナが訴えている間に、アシェルは手巾を取って横からフィアナの顔を拭いた。 「わかったわ。お母さまがしてあげるから、そう泣かないで。ほら、後ろを向いて」  大好きな母が髪を結ってくれるとあって、先程まで大泣きしていたのが嘘のようにフィアナはご機嫌だ。ワクワクしながら母に背を向けて、今度はアシェルにあれこれと話しかけている。拙くてあちこちに飛ぶ話を、それでもうんうんと頷きながら耳を傾けるアシェルに、フィアナの髪を櫛で梳いていたミシェルはクスリと笑った。

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