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第175話

「本当にフィアナはアシェルお兄さまが大好きね」 「うん! フィアナはアシェルおにぃーさまとけっこんするの!」  無邪気な大声で告げられたそれにアシェルは固まり、ミシェルはポカンとした後に涙を浮かべながら声をあげて笑った。 「ふふふふふッ、まぁ! フィアナはなんて可愛いのかしら。そうよね、アシェルはお父様に性格がよく似ているから、優しくて奥方を大事にする夫になるわ。爵位や領地が無くても、アシェルの奥さんになる人はきっと幸せね」  三男であるアシェルには継ぐべき爵位も領地もない。それをアシェルはよくわかっているが、フィアナにはまだ難しい話だったのだろう。コテンと首を傾げながら、それでも大好きな兄が褒められているのは間違いないと察して、ニコニコと微笑んでいる。 「さぁ、これで良いわ。ね? フィアナ」  鏡台の前に促して、ミシェルはフィアナを抱き上げた。促されるままに鏡を見たフィアナがパァッ! と顔を輝かせる。 「わぁ! すてき! ありがとうおかあさま!」  どうやら今回はちゃんとお気に召したらしい。まったく、困ったお姫様だとアシェルが苦笑した時、夢中で鏡を見つめていたフィアナがコテンと首を傾げ、母の胸元を探った。 「おかぁーさま、これなぁーに?」  小さく柔らかい手が掴んだのは、母の首にかけられていたペンダントだった。

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