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What I will become 何になる?2

「……セバス」  小声で直の使い魔を呼ぶ。 「魔法陣の準備ですね、いますぐに。その間、こちらをどうぞ」  音も無く現れたセバスは、猫頭の執事姿で、今日も今日とてかいがいしく働く。  呼ばれる前から準備していた俺用のハーブティー――イエルバマテ茶をベースにした、精力回復用。直の特別レシピだ――の入ったジョッキを、俺に手渡す。  俺はジョッキの中身も直の中に出した精液も、零さないようにそっと動く。  乾いた喉を潤して、空になったジョッキをセバスに返す。  魔法陣を描いたラグが敷かれ、パワーストーンが四方に置かれるのを見届け、自分を直からゆっくり取り出した。 「んっ、ん……」  艶のある声が耳を打つ。くそっ、また少し硬くなっちまった。  俺は再び湧き上がりそうな欲求を無視し、掌で精液が溢れないよう直のお尻を押さえながら抱え上げて、魔法陣の上へ移動する。  直をそっと横たえ、両手で陣に触れた。掌に思い切り力を込めると、魔法陣が薄い黄色の光を帯び始める。 『直を守りし  森の女神、男神よ  結合により創造された  新たな命  小さき存在  奇跡を  次代へ繋ぐように  天よりもたらされる  恵みの雨が  運ぶ風が  照らされる光が  命を育むように  交わりにより生まれ出でた  甘い疼きが  合わされた身体から生じる熱が  重なる歓びと恍惚が  身体を刻み、耕し  我が  解き放った血潮を  白濁の分身を  一片の曇り無く、求める心の証を  芽吹かせる種として  我、周央新太、大地の女神に恩恵を授かりし  森の守護と結界の担い手に捧げる  与えられた精を  彼の者の力の糧と成せ』  一瞬、光が強くなり、すぐさま収束する。これで儀式終了だ。 「はー、この手際の良さ。何度見てもうっとりいたしますね! もうすっかり、新太様自身の詠いになっておりますよ」 「いやいや、全然。ほぼ直の真似だ、知ってるだろ。俺の立場に合わせて少し言い回しを変えてるだけ」 「だとしても、素晴らしい。魔法の作用は、完璧でございます。つまり、ご自身の詠いに昇華されているということです」  俺は肩を竦める。  直を抱えてベッドへ運び、人型になったセバスに温かい濡れタオルと、冷たい濡れタオル、両方を持ってきてもらう。温かい方で直の身体を拭きながら、冷たい方を目の上に乗せる。こうしないと明日、目が赤く腫れてしまうからな。  こんな感じの夜を、ベルテイン以来数ヶ月、ほぼ毎日続けている。  そりゃあ、ちと言葉は悪いが、詠いを含め、直の後処理も難なく出来るようにもなるってもんだ。  無防備な事後の直は、普段よりエロくて可愛くて綺麗さが倍増している。その身体を思うがままに触れられるんだから、文句は全く無い。  しかしまったく、なんてこったい、だ。  直は、あのベルテインの夜から、完全に混乱している。どれくらいかというと、俺の目を見るだけで、勃ってしまうようになるくらいだ。  あの日、お小さい方々(ウィー・フォーク)は俺達を真っ直ぐ、このフラットまで連れてきてくれた。  戻ってくるなり互いを貪るように交わった俺と直は、結局三日三晩、寝室から出られなかった。  いや、何度か止めようとして、シャワー室にふたりで入って、結局そこでもヤってもの足りなくて寝室に戻ってまたヤる、を繰り返したんだっけ。  いい加減にしてくださいと、セバスとましろから説教されてようやく収まりをつけて。  それからだ。  直は俺と目を合わせると、次第に頬を赤く染め、瞳を真っ赤にして潤ませる。足をもぞもぞと動かす。  下に目をやると、もう膨らませている。  当初、直は自分だけで処理しようと頑張っていたらしく、突然トイレに籠って長い時間出てこないことが数回続いた。そうして数日後。 「新太に触ってもらわないと、イけない」と泣きじゃくってトイレから出てきたのだ。  あれはマジで可愛……じゃない、可哀想だった。なので、日中の唐突な勃起に対しては、俺が手、もしくは口で対処することにした。  ちなみに直のに触れて硬くなった俺のものは、大抵時間が無いので残念ながら自分で処理する。  もちろん、夜の時間は別口として、たっぷりヤけどな。    直が大学を卒業し、俺のニ年次が終わった後の夏休みは相当ヤバかった。日本に戻る用事がなければ、いつまでもいつまでもヤっていただろう。  日本からスコットランドへ戻り、夏休み後半、職場の研修が始まると、直は次第に俺から視線を逸らすようになった。  仕方ないと思う。学生と違い、社会人は遅刻もサボりもアウトだ。いや、学生だって遅刻、サボりはやっちゃいけないけどな。  ともあれ、無理矢理そっぽを向き頬を上気させる直も、最初の頃のツンツンな直を思い出すしその時よりも増大した色気がばしばし伝わってくるし我慢に我慢を重ねた夜のエッチはくそ燃えるしありがたいといえば、ありがたい。  しかもだ。  直は、中でより感じやすくなった。全く射精しない日もある。身体を拭きながら確認したが、今日もほぼ出していない。出さずにずっと、中が痙攣して何度も何度も達する。  セバスの申告によれば、直とセバスの魔力はこれまで以上に増しているらしい。  そらそうだ、本人からは出てないんだもんな、その分魔力も蓄積される、なるほどそうだろう。しかしめっちゃくそ搾り取られるようになったせいで、俺の方はかすかすだ。  だから最近では、精のつくハーブティーが事後、必ず用意されている。  直は、混乱して暴走しやすい。  高校の時に分かってたはずなのにな。  佐倉さん、ほんと、何てことしてくれたんだよ……いや、俺か、俺が悪い。  俺は、高校の、あの儀式の日から直のことを冗談や比喩ではなく、“女神”だと思っている。  本人には敢えて、伝えずにいた。  何故なら言っても言わなくても俺の中では不動の事実だし、直のツンの発動を警戒してたってのもある。そのことで何かがあるなんて、思ってもみなかったしな。  直を女神だと思っていることが、想定外のことを色々引き起こす原因になっている……ってのは、ダイアナからヒントを得て、ましろを使い魔にした辺りで気づいた。  それでも、直に告げないことを選択した。だから何だ、って感じだったし。俺は俺だ。直は俺の女神だ。はい、終了。  ベルテインの日、佐倉さんから俺の考えを聞かされた直は、何故かツンどころかもう、革命でも起きたんじゃないかと思うくらい、大変なことになってしまったんだよな、主にエロい方向で。  てか、目を合わせるとスイッチが入るって、どういうことだ?  本人に聞いても真っ赤になって、どもって、目を見つめてきて、即エロスイッチが入る。直が迫ってきたら、俺の方は拒否る術を持たない。むしろようこそいらっしゃいお待ちしてましたよの大歓迎だ。あの濃厚な色気を駄々洩れさせながら、切なそうな声で「あらた」なんて囁かれたらそれだけであっという間に下半身は準備完了だ。  そんなわけで、まともに話が出来ず、きちんとした理由が確かめられないままになっている。  ヤり始めたらヤり始めたで。  嫌だと口では言いながら、いままでに無いくらい積極的に、俺を求めてくる。見ないでと泣くくせに、目が離せないほどの色気を出して、釘づけにする。  もう許してと懇願するが、動きを止めないのは直の方だ。  少しも離れたくないらしく、抜くのまで嫌がる。  俺が悪い。  情報を全く与えないのではなく、ちゃんと思った時に伝えれば良かった。もしくは小出しにするとか。 『好きだ』とようやく伝えた際に信じてもらえなかった、高校の時と同じ間違いを犯してしまった。  だから直に、普段あまり目を合わせてもらえなくて寂しいなんて我儘、言えないよな。

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