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第10話 銀狐、狙われる 其の四※

   「へぇ? 存外可愛い声で啼くじゃねぇか。獣系の魔妖はここが堪らんだろう?」 「や、やめ……ろ、っあ、はぁ……んんっ」 「もうおっ勃ててやがるのか。さすがは闇で評判の、魔妖専用の媚薬だなぁおい。即効性抜群だ」    そう言いながら、尻尾の付け根に触れていた指が(いざらい)の双丘を割る。衣着の上から後蕾を粗暴な指遣いで、まあるくぐりぐりと刺激していたと思いきや、先程とは打って変わった柔い手付きで、ふぐりを揉み(しだ)く。   「……ふ、あぁ、んっ……っもうやぁ……っ」    そうして男の手が若狐の若茎に辿り着く頃には、先端から蜜が溢れて衣着に染みを作っていた。男が若茎の形を擦るように触れるだけで、蜜染めはどんどん広がっていく。   「これはこれは仕込み甲斐がある。どんな淫乱な子狐に仕上がるのか、楽しみで仕方ねぇ」    男は荒々しい息を、(こう)の灰黒の耳に吹き付ける。本来ならば気持ちが悪いと思うはずの男の行為の全てが、気持ち良くて仕方がなかった。薬の作用で身体の自由が利かないままだったが、もしも動けていたのなら、衣着からくっきりと形の浮いた若茎を、無意識の内に男に擦り付けてしまっていただろう。    晧は甘く荒々しい息を吐きながら、快楽で朦朧とする意識を何とか保っていた。意識を失ってしまえば、どこに連れ去られ何をされるのか分からない、そんな気持ちが頭の中をまだ占めていた。  だが意識を失えてしまえた方が幸せだっただろう。身体も心も、ただひたすら快楽を求めて染まっていく様を、自覚せずに済んだのだから。  気付けば男の硬くなった一物が衣着越しに、晧の若茎に擦り付けられる。  擦られる度にじゅく、じゅく、と卑猥な水音が聞こえてきて耳を犯した。   (……ああ、だめだだめだ)    気持ちがいい。  もっともっとして欲しい。   「……っ、はぁ……ぁっ……!」    目の前の男に縋るような甘い声が、晧の口から発せられる。  男がくつりと笑った。   「よしよし。攫って来いって言う命令だったが、やることは一緒だろうさ。これから一晩、いや二晩掛けて、お前をたっぷり仕込んでやる」    たっぷり仕込む。  男のその言葉に更に熱くなる身体と、その裏腹に心の奥底のどこかに冷たいものが落ちて波紋を作った。  もっと触れて熱を解放して欲しいと思う気持ちと、止めろ触るなという気持ちが鬩ぎ合う。  何も言わずに許婚竜から逃げた罰、なのだろうか。   (……こんなところでこんな男に犯されるなら、初めてはお前の方が)    良かった。  逃げたというのに、そんな勝手なことを思う。  どんなに冷たい灰銀の目で自分を屈服させたとしても、あの真竜は性技を仕込んだ挙げ句に、物好きな好事家に自分を売ったりなどしないだろう。   (それに……)    こんな状況だというのに、何故か思い浮かぶのは、自分の後ろを短い脚で、とてとてと着いてきたあの幼竜なのだ。  

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