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第48話 銀狐、組み敷かれる 其の一
朝の気配がして晧 は半分意識を浮上させた。まだ眠いと思うのと同時に、この上掛けの中がひどく心地良くて微睡む。
懐かしい良い匂いがする、とても温かいものに包まれていて、気持ち良くて堪らない。堪らないというのに頭の優しく撫でる感触もまた気持ち良すぎて、晧はそれを掴むと優しく牙を立てた。これ以上気持ち良くさせるなと言わんばかりに、カカカと狐の声で鳴きながら幾度も甘噛みを繰り返す。
どこか骨張った感じのするそれが、牙に触れる感触すらもだんだん気持ち良くなってきて、止めるに止められない。
これは一体何だろう。
そう思った瞬間、意識が急浮上する。
「……ようやくお目覚めですか? 晧」
「──へ?」
くすくすと笑いながらすぐ近くで聞こえる白霆 の声に、晧は何が起こったのか分からずに茫然とする。
目の前にあるのは、白霆 の温かい手だ。
所々、牙痕がある。
それだけで自分が何をしていたのか一目瞭然だ。
「あ……」
途端に顔が熱くなる。
昨夜、意識の遠いところで懐かしい香りを求めていた所に、隣の寝台から同じ香りがした気がして、思わず恋しいと思ってしまった。それは覚えている。
(まさか……そんな)
「起きてびっくりしましたよ、晧。とても温かい体温を腕の中に感じたもので」
ああ、やはり。どうやら自分は白霆 の寝台に、無意識の内に潜り込んだらしい。
「しかもずっと私の手を甘噛みしてくるんですから。そんなに……私の手は好きですか?」
「あ、あ、寝惚けてて……す、すまなかった、白霆 !」
妙に恥ずかしくてならなかった。自分を口説くと言った相手の所に、覚えていないとはいえ懐に潜り込むなど、本来の自分なら有り得ないことだ。
晧が慌てて起き上がり、寝台から出ようとした。
だが。
「──っ!」
腕を引っ張られて寝台に引き戻される。
背中が敷包布に付く頃には、晧の身体は白霆 によって組み敷かれていた。
「……はくて……?」
「私こそ申し訳ありません、晧。昨日言ったこと、少しだけ撤回させて下さい」
「へ」
「『何もしない』と言ったことを。ほんの少しだけ『何か』しますので」
「は?」
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