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第90話 銀狐、目合う 其の十二 ※
「──っっ!!」
白霆 が息を詰める。
だがすぐさま荒々しく息を吐いた。
ぐる……、とその中に混ざる張り詰めた竜の唸り声に、晧 は本能的に服従を示して力を抜く。
まるで殻を破ったかのようだと晧は思った。
ぎらついた灰銀の目に射抜かれて、ぞくぞくした官能が背筋を駆け上がり、尾骶がつんと痛む。婚儀の相談の時に見たあの瞳よりも、更に貪欲でどこか飢餓めいた瞳だというのに、晧はそれをもう怖いとは思わなかった。
(……だってこの目は)
俺のことが欲しくてならないのだと訴えてくるから。
「あ……っあ……っ!」
少しずつ少しずつ拡っていく後蕾。
ゆっくりと、だが確実に太くて硬い雄蕊 が、胎内に挿入ってくる。その熱さと圧迫感が堪らなくて自然と入ってしまう力が、雄蕊を押し返そうとする。
くすりと白霆が笑った。
「……ゆっくり息をして、晧。力、抜けますか……?」
本能を剥き出しにしたかのような目と表情をしているというのに、白霆の声はひどく優しい。そのあまりの違いに胸が高鳴って仕方ない。
「そうゆっくり……吸って……吐いて……」
声を聞いて白霆に素直に従って呼吸をする。
そうして晧が力が抜けた頃を見計らって。
「──……っっ、あ、ああぁぁ──っ!」
ぐぷん、と。
雄蕊の、傘の張った一番太い部分が後蕾の窄まりを抜けて、ぐっと胎内に挿入ってきた。
「あ……っ、あ……」
「……大丈夫ですか? 痛みは」
晧は弱々しく頭を横に振る。
白霆が丁寧に舌で解してくれたおかげか、痛みは感じなかった。ただ凄まじい圧迫感と熱さが苦しかった。灼熱のものが自分の腹を、じわじわと蹂躙していくのが分かって、自分を保てなくなりそうだった。
熱くて苦しくて、狂おしい。
慰めるように白霆の唇が狐耳に落とされる。
「……すみません、これで半分です」
「──っ!」
「貴方の身体が慣れて下されば、最後はここ……」
白霆の指が触れるのは臍孔の少し下辺りだ。
「貴方のここある子袋まで挿入ります」
「あ……っ」
「今はまだお互いに発情期ではありませんので、子を成すことはありませんが……いつか時が来たら」
「──っ、十頭でも二十頭でも生んでやるさ……はくてい……」
「晧……っ」
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