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第99話 銀狐、目合う 其の二十一 ※

 口腔を円を描くように優しく舌で蹂躙しながら、(こう)の背後から覆い被さるような体勢を取っていた白竜が、その竜体を晧の身体に密着させた。    「──ふっ、んんんっ……! ──!」    白竜がぐっと腰を使えば、その雄蕊(ゆうずい)は先程恐ろしいまでの悦楽を感じた袋口に、まるで拵えたかのように嵌まる。  ぐぽりと淫靡な水音を立てて、白竜の竜舌から解放されたその須臾(しゅゆ)。  晧の色付いた唇からは、濁音混じりの嬌声が溢れ出した。   「──ひ、あっ! ああぁぁあ……──!」    薄い腹は白竜の雄蕊の形が分かるほどに盛り上がっていた。いま腹のどの場所まで受け入れているのか、ありありと刻まれて分かってしまう。  苦しい。  熱い。   だがそれ以上に気の遠くなりそうな深い快楽と、白竜を好きだという気持ちが全てを凌駕していた。   『晧……っ、挿入(いれ)れて……! この袋の胎内(なか)に』 「あ、あ、あ……──っ!」    袋口を捏ねるような先端の動きに合わせて晧の花芯からは、どぷり、どぷりと白濁の熱が幾度となく溢れ出す。それは敷包布との間に卑猥な糸を、つつと引いて止まらない。   雄蕊はやがて袋口を捏ねながらも、叩くような動きを見せた。滑りを帯びた先走りの蜜を塗り付けられる度に、袋口はひくついて雄蕊の先端を少しずつ咥え込む。   「はぁ……っ、ん、や、ぁ……っ、奥、おくぅ……きもち……」 『晧……声、可愛い。ここ気持ち良い?』 「ん……」 『……もっと……もっと気持ち良くなって下さい。そしていつか子袋(ここ)で……』    ──私との仔を孕んで……晧。    「は……──!」    脳内に響く白霆(はくてい)の言葉に従うかのように、雄蕊を迎えに子袋が降りてくるのがわかった。  袋口に僅かに咥えられた先端が、ぐにゅうと音を立ててその入口を押し広げていく。  その締め付けが気持ちいいのか。もしくは雄竜としての本能が刺激され興奮しているのか。白竜の息遣いが、はっ、はっ、と獣のような短く息を切るものへと変わった。  袋口の半ばまで呑み込まれていく雄蕊。  最後の一押しとばかりに白竜が強く突き入れた、その刹那。   ずるりと雄蕊の先端が、袋口の奥へと入り込んだ。   「──……ッあ、んああぁぁっッ……──!」    とてつもなく深く襲い来る胎内の極致に、晧はまるで身体ごとどこかへ落ちてしまいそうな気がして、必死に敷包布を掴む。  銀狐として番としての本能か。ようやく袋底に辿り着いた愛しい白竜の雄蕊を、離してなるものかとばかりに、袋口はしっかりと雄蕊を咥え込む。  抽送の度に袋底に媚薬を含んだ真竜の蜜を擦り付けられて、晧は更に法悦の深みに嵌まった。極める度に袋全体が雄蕊の先端を優しく擦り上げ、袋口と結腸の蕾が茎を締め上げる。悦楽に震える媚肉が蠕動し、陰茎をもっと呑み込もうとする。  根元にある丸く膨らんだ瘤ですら、欣喜(きんき)だと言わんばかりに。胎内は艶めかしくも、幾度もぐねりと蠕動し、白竜の雄蕊を根元に至るまで歓迎していた。    『──っ、晧……こうっ! はっ……こんなにも私のものを、美味そうに呑み込んで、食んで下さって……! 私の全てを受け入れて下さり、嬉しい……っ!』 「んんっ!はっ、ああっ……!」 『子袋(ここ)にたくさん出します。受け止めて……!』    欲によって掠れてしまった、白霆の低い声を聞いたその刹那。  白竜の雄蕊が大きく震えた。  やがて袋底に叩き付けられる灼熱に、晧が咽び啼く。    「……あ、熱いっ、あつ、いっっ! ……んっっ──……!!」 『晧……好きです……好きです、こう。たくさん……たくさん、味わって』 「──っ、ひ、あああっ……!」    熱は雄蕊の瘤が栓となって袋内にとどまる。  それでもなお吐き出される熱が、苦しくも狂おしいほどに愛しくて、晧の頭の中が真っ白になった。        ああ、いつかこの熱が身を結べばいい。   生まれてくる仔は竜か狐か。  どちらにしても可愛くて愛しいことに違いないだろうから。  白竜の白濁の熱に酔い痴れながら、晧の意識は次第に甘い闇の中に堕ちていったのだ。                 

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