fujossyは18歳以上の方を対象とした、無料のBL作品投稿サイトです。
私は18歳以上です
逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~ 番外編 銀狐、温泉に入る 其のニ | 結城星乃の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
逃げる銀狐に追う白竜~いい...
番外編 銀狐、温泉に入る 其のニ
作者:
結城星乃
ビューワー設定
103 / 107
番外編 銀狐、温泉に入る 其のニ
晧
(
こう
)
は何も言えないまま、
白霆
(
はくてい
)
の言葉に頷いた。 普段なら普通に会話していたことが、『先に湯殿へ行く』というたったそれだけのことで、身構えてしまって何も話せなくなる。 それに昼餉のことは分かる。遅めの朝餉を先程食べたばかりだ。 だが夕餉の相談とは何だろう。少し遅らせて欲しいとかそういうのだろうか。 (……遅らせるほど、湯殿で何するんだよ……っ!) ただの想像でしかないというのに、自分で心内に思ってしまった内容に晧は顔を赤らめた。 だが白霆は、変なことをするなよと言った自分に対して無言だったのだ。これは温泉で『する』と言ってるのと同じじゃないのか。 晧は深くため息をつきながら、脱衣処の引き戸を開けて中に入った。 脱衣処は独特の暖かく湿った空気が占めていた。その中にこの部屋に使われている木の良い香りがして、少しばかり気が和らぐ。 格子棚の中に置かれている籠の中には、白い
湯浴衣
(
ゆあみい
)
が用意されていた。 宿の湯殿には後で着替える為の
眠衣
(
ねむりぎぬ
)
が置かれている場合と、湯に入る為の衣が置かれている場合がある。眠衣は
上衣
(
うわぎぬ
)
と下穿きに分かれているのに対し、湯浴衣は膝を隠す程の丈のある一枚の衣着だ。ここの湯殿は今着ている眠衣を脱いで、湯浴衣に着替えてから湯に入るのだろう。 晧は眠衣の上衣を脱ぐ。 ふと何かが気になって横を向けば、そこにはとても精度の良い姿見があった。 「──っ!」 映し出されている自分の姿に、晧は息を詰めて顔に朱を走らせる。 白い肌に淫靡にも浮かんでいるのは、紛れもなく唇痕だった。首筋や鎖骨、胸の漿果の近くや、臍孔の周りにまで散らばった鬱血痕が、ほんの先程まで愛でられていたのだと証明している。 直視すればするほど恥ずかしくて仕方ないというのに、どうしても目を離すことが出来ない。 (──ああもう、
白竜
(
ちび
)
……っ!) 晧は心の中で呻いた。 思い出してしまう。 この肌を吸われた時の甘やかな痛みを。 (──それに……) 心の臓の少し上辺りにある、銀狐一族の次期長の証でもある紋様。 竜が翼を広げたような形をしているそれは、ずっと片翼だった。だが今は見事に両翼を広げている。これがまさに定められた
番
(
つがい
)
と情を交わした何よりの証だった。 同じものが白霆の胸にも存在する。彼の紋様もまた両翼を広げているはずだ。
前へ
103 / 107
次へ
ともだちにシェアしよう!
ツイート
結城星乃
ログイン
しおり一覧