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番外編 銀狐、本当の大きさを知る 其の五

『う……』    晧は白霆から視線を逸らすと、狐耳を更にへにょっと倒した。まさに図星でその通りだった為、何も言えない。すると白霆の、くすりと笑う声が上から降ってくる。  香りを嗅ぐように白霆が、晧の狐の首辺りに鼻梁を擦り付けた。やがてふわふわの頭に何度も接吻を落とされて、晧は居たたまれない気持ちになる。   「中々会いに行けずに、寂しい思いをさせてしまって……すみません、晧。貴方の姿を見ることが出来て、私は嬉しい」  『……突然来て、迷惑だろう?』    素直に自分の感情を話す白霆が、愛しくも憎らしくて晧は捻くれた物言いをした。会いたかったのだと素直に言えない自分が嫌で堪らない。こんな自分を彼は一体どう思うのか。考えるだけで恐ろしくなって、後脚の間にふさりと尻尾を挟み込む。     「迷惑だなんて思うはずがない」 『だが……ちゃんと事前に折式で連絡をすれば良かったと思ったんだ。だから……』 「だから帰ろうとしたの?」 『ああ。今だってお前の勉学と仕事の邪魔になっているだろう? だからまた今度時間を……』    言葉の続きを晧は話すことが出来なかった。  思わず苦しいと思ってしまうほどに、抱き締められる。そして宥めるかのように、胸元の銀の毛並みに指を埋めながら撫でられて、彼の言葉が本心なのだと悟った。    「邪魔だなんて思うはずもありません。それに今日の分の薬の調合はすでに終わってまして、来られる患者さんも少ないのでどうしようかと、麒澄医生と話していたところなんですよ。ねぇ、医生」    白霆は晧を抱いたまま、薬屋の扉を覗き込む。  そこには椅子に座り卓子に肩肘を付き、不機嫌そうに葉煙草をふかしている壮年の男がいた。  薬屋『麒澄』の主、麒澄だ。   「──ということで、愛しい番が迎えに来てくれましたので、今日は帰ります」    そう言うと白霆が晧の片方の前脚を掴み、麒澄に向かって振る。   「おう、帰れ帰れ! ……ったく店先でいちゃつきやがっ……ん? おい馬鹿弟子! 晧をそのまま抱いてちょっとこっちに来い」  

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