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六
その夜、ぼくは発熱した。
タカハシの旦那のお優しいセックスを見たせいで知恵熱みたいのを発症したのか、工藤のバズーカ砲がウイルス感染でもしていたのか、まあおそらくは、毎日のように自分の腸内バイ菌を口に戻し入れているのが、祟ったのじゃないかと思う。
夕食も買いに行く元気がなくて、測ってみると三十八度以上ある。水を飲んで横になると、うつらうつらとソファで眠りこけてしまった。
「おい。起きろ」
体を揺らされて目が覚めた。重い瞼を開けると、悟さんだ。
「…あ――」
掴まれている腕が痛い。悟さんはとにかくなにをするにも乱暴だ。
「起きろ。時間が過ぎているだろう」
「……?」
首をねじって壁時計を見ると、十一時十分。ほんとだ。十分過ぎてる。
ぼくは奴隷だから、十一時にはご主人様の、つまり悟さんの部屋に犯されに赴かなくてはならないのに、今夜は寝過ごしてしまったのだ。
「ごめんなさい。今、熱があって――」
「…熱?」
悟さんの顔が恐ろしく不機嫌に歪む。つかのまぼくを睨んでから鋭く命じる。
「どうでもいい。早く来い」
鬼か。
「でも。――なにかの病気だったら…、あの、うつるかもしれないし…」
「ふざけるんじゃねえ。早く来い」
腕を引っ張られる。頭がぼんやりする。前頭部に鈍い痛みが刺しこむ。
引き起こされるままに立ちあがれば足がふらついた。今日はだいぶ心理的な打撃が多かったからな、それで熱でも出ちゃったのかしらん。
「あの。シャワーを浴びたいんですけど。汗かいて、汚れているから」
そうは言うものの、目的は体を洗うためじゃない。
ぼくは毎日犯される十一時に合わせて、トイレとシャワーを済ます。それは直腸洗浄のためと、そのあとで肛門にすべりの良くなる油を塗っておくためなのだ。
油を塗らないと挿入時にえらい痛い目に遭う。それはもう、ピストンのたびに内側の皮膚が削がれるような感じで、いくら毎日ヤられてガバガバのお尻でもものすごく痛い。だから油を塗ってから、悟さんの部屋に入ることにしているのだ。少しだけ、マシだから。そこで運良く悟さんが疲れて寝ていればラッキー。その日はセックスはなしだ。でもそんなのはごく稀で、ほとんどはそのまま犯されることになる。
「遅くなる」
引きずられるようにして部屋に連れて行かれた。…ああ。いやだな。このままだとものすごく痛いんだよ。乾ききったところに入れられるんだもの。それに脱腸でも起こさないか心配だ。
まるで刑場に曳かれてゆく死刑囚のような気分で悟さんの部屋に入った。ここで抵抗しようものなら半殺しにあうくらいにひっぱたかれるから、ぼくはおとなしく諦めて服を脱ぐ。悟さんは偉丈夫だしむかしボクシングを趣味にしていたくらいだから、ぼくなんて一叩きで壁まで吹っ飛ばされてしまう。
ベッドに上がって四つ這いになった。ぼくを殺そうとする剣のひとふりが差し込まれるのを待つ。
悟さんがぼくの後ろに来た。どうか入るときに少しでも痛くありませんように…と願い終わる前に、バシンと背中が鳴った。
「痛いっ」
ジンジンと膨れあがるベルトによる痛みに耐えるまもなく、千切れそうなほど強く左右に尻の肉を開かれて、ペニスが挿入される。
「あっ、あっ、あっ、」
痛いよ、痛い…! 息ができないくらいだ。
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