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「そんなことより、続きしてよ。あんたの、すごく、気持ちいい――」
ぼくはタカハシの首に両腕をまわして引き寄せ、いったん盛りさがってしまった欲望の溝を埋めるみたいに、覚えたてのキスをねだった。
背中の痛みなど、どうでもいい。
タカハシに抱かれているうちに肺に肋骨が刺さって死ねるなら、本望だ。
タカハシの舌が胸やら腹やらを這い始める。ぼくの「いいところ」をすぐに見つけて特に念入りに苛める。その度に感じるぼくは、嬌声をあげて体を打ち振った。
短パンも難なく脱がされてしまった。
熱のある、固くたくましい手のひらがぼくのペニスを包み、指がゆっくりと這い――ぼくの先走った液を先端に塗りたくる。いやらしく、ちょうどいい強さで…。括れにまで、ぬるぬると。
ぼくは息もたえだえになって、快楽の嵐の中で身を揉んだ。
「ん、だめ――」
ひくついてとまらない腰は、途方もない快感に焙られていまにも蕩けそうだった。
「イッちゃうよ…」
タカハシが軽く笑う。
「まだだろ」
「あ…! ね…ぼく、あんたと一緒にイキたい。この間の、あいつみたいに。できる?」
疼く腰を大きくうねらせながら、ぼくはせがんだ。
「ああ、できると思う」
顔色ひとつ変えやしない。憎らしいくらいのポーカーフェイス。
「じゃあ、そろそろ繋がろうか」
「ん」
頷くと、ゆっくりと体をひっくり返された。
「背中、見ないでよ」
もう一度、念を押した。
「分かってる」
ぼくは習慣的に四つ這いになった。自分でも情けなるほどに慣れている姿勢。こんなぼくを見て、タカハシはなにを心中に感じるだろう。
尻を大きな手のひらで包まれた。油は塗ってこなかった。どんなに痛くてもタカハシをそのまま感じたくて…。
「あっ?」
突然、そこに思いがけない感触がして、体が竦んだ。…舌。舌が、あそこを舐めてる。
「んぁ…? ダメ、ダメだよ? そんなの、ダメ――――!」
タカハシがぼくの尻の谷間に顔を埋めている図なんて、とんでもないよ。
「いや、いやぁ…!」
這いずろうとしても腿をしっかりと捕まれて動けない。襞の一つ一つまでを丹念に舐めたかと思うと、窄まりの内側まで入り込んできそうなくらいに深く、鋭く、くじられる。
「ああっ! やめて――あんっ、ぁあっ、」
膝がわななく。またビンビンに勃起する。しばらくして舌の感触がやみ、かわりにぬるりとしたものが触れた。
タカハシは、ゼリーを使ってぼくの孔をほぐしていた。やがて、少しずつ指を増されながら内側までも柔らかくされる。なされるまま、ぼくはじっとしていた。いつも突然ぶち込まれるだけのぼくには、こんな手順など分からない。
やがて固いものがあてがわれる。
その時を予感して歯を食いしばった。
孔が押し広げられる。異物が侵入する。
「んぁ――おっきい…!」
どんだけの淫乱だよ、と思われそうな言葉を口走ってしまったことを、言ってから後悔する。
そのまま少しずつ挿し込まれる。悟さんみたいに乱暴にじゃない。ほぐされたからか、進入もありがたいほどつらくない。
「あ…」
肩で息をつくと、耳の後ろでタカハシがそっと呟く。
「すんなり入ったな」
静かにピストンを始める。少しずつ、様子を覗うみたいに。
一方でぼくは胸に不快な靄 がわいた。
(どういう意味だよ、それって――)
確かに、どちらかといえば簡単に入った方だろう。指でほぐすのだって、もしかしたら他のやつより楽だったのかもしれない。
だってぼくはやられ慣れてるのだもの。いやいやだって毎日やられていたらお尻はガバガバになる。バージン や久しぶりのやつなら、それこそもっともっと入りにくくてつらいだろうけれど――と思った途端、心臓が激しく抉られた。頭の上から冷や水を浴びたみたいに、全身が冷たくなった。
(――ああ。なんだ。そっか…)
ぼくは苦々しく片頬を歪めた。これか、タカハシの言いたいのは。
タカハシは当然、気付いていたんだろう。もう、きっととっくに。たぶん、ぼくをこの部屋に入れたときから。
そうだよな。タカハシなら気付いたはずだ。
なにをって、昨日もぼくが「ステディ」とセックスしたってことを、だ。
別れるつもりだなんだと言いながら、ひょこひょことヤられたばかりのケツでここにやって来て、自分を誘ったってことをさ。
まったくぼくはバカだ。
タカハシは、ぼくをとんでもなく嘘つきな尻軽野郎だと思っていることだろう。これじゃ軽蔑されたってしかたない。申し開けることもない。
(ならば、いい。それでいい)
泣きたくなる気持ちを抑えた。
ぼくはいま、タカハシに抱かれて彼のものを咥えている。自分で望んだとおりに、だ。それでいいじゃないか。それだけが現実だろう?
ぼくのこのくだらない思考や頼りない感覚よりも確かなもの。ただ、彼と繋がっている、その事実だけがいまのぼくのすべて。それだけがいまのぼくを生かしている。だからいくら軽蔑されたっていい。いくら誤解されたってかまわない。
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