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第38話 君でいっぱいになる

 ネットで調べた通りになかなかできなくて、不安だったんだ。  できるかなって心配だったんだ。  でも、よかった。 「佑久さん……」 「ぅ、ん」  セックス、できる。  よか――。 「あ!」 「佑久さん?」 「あ、あのっ、ごめん。僕っ」  そうだ。せっかく色々調べたのに、忘れてた。 「佑久さん?」 「僕も、してあげないと、なのに。ごめん。えっと」 「ちょっ、待って、落ち着いて」 「します、口、で」  前戯、大事って書いてあった。気持ちが盛り上がらないと、例えば、挿入できても充分に気持ち良くなれなかったりするって。お互いがお互いのことをちゃんと高められるようにしないといけないって。自分ばかりが快感を得ていてはいけないって。 「口でっ、ちゃんと練習、というか、色々サイトで調べた、から」  大きめの飴玉を舌で転がすのがいいって書いてあったから、お店にある一番大きそうな飴玉買って、四六時中舐めてみたり。  ――あれ? 椎奈くん、飴舐めてる? あはは、いいよいいよ。まだ仕事の時間じゃないから。時間になったらダメだよー。珍しいなぁって思っただけなの。  図書館で近藤さんにそんなことを言われて真っ赤になったりした。  ――お互いに、気持ち良く、なる、ためっ……イタタタ。  身体が柔らかい方がいいってあったから、毎日ストレッチしてみたり。 「だから、します」 「いや、そんな意気込まなくて大丈夫だよ」 「下手だと思うけど、でも」 「ありがと」 「……」 「あ、違くて、下手だからしなくていいとか、そういうんじゃなくて。つか、本当に色々調べてくれてたんだ」  たくさん、この日のためにって準備して、ました。 「正直」 「はい」  あ、ムードも大事ってあった。そうだ。なのに、僕、しますっ! って、ムード遮ったかもしれない。 「俺、もう暴発寸前なんで」 「……ぇ、あ」 「すげぇ好きって言ったじゃん」 「……ぁ」 「その好きな人が俺の指が入ってよかったとか、嬉しいとか、つって、ふにゃふにゃに笑って、しまいには、しがみついて、そんで、このタイミングで口でするとか言い出すから」 「……」 「限界」  熱を測るみたいにおでこがコンって当たったら、独り言のように呟いた和磨くんの吐息が唇に触れた。  熱くて、しっとりとしていて、呼吸が乱れてる。 「……ぁ」 「口でしてくれんの、また今度」 「あ」  また今度、が、ある。 「してよ」 「っ、ん」  心臓が破裂するかと思った。僕の肩に歯を立てた和磨くんが一度起き上がって、服を雑に脱ぎ捨てるとこをこんな間近で見ただけで、心臓が飛び跳ねる。  抱き上げられて。 「わっ」  貸してもらっている和磨くんの服を脱がされて、何も身に纏っていない裸で、膝の上に乗せられると、その。 「あっ」  思わず口元を手の甲でぎゅっと抑えたら。ダメって、その手を掴まれた。 「声、我慢しなくていいよ」 「あ」  和磨くんの指が僕の、そこを、くるりと撫でた。ローションたくさん塗ってもらってるから、指で触れられると、そこからクチュクチュってやらしい濡れた音がして、恥ずかしい。 「抱くね」 「っ」 「ゆっくりするから、しがみついてて」  恥ずかしいけど。 「あっ」 「っ」 「あ、和磨、くんっ」 「うん」 「あ、あ、あ、は、ぁっ……」  嬉しくて。 「あっ」 「っ、佑久、さん」 「あぁぁぁっ」  身体がいっぱいで、苦しいのに。 「あっ……ぁ」  気持ち、いい。 「はっ、っ、っ、佑久、さんっ」 「ぅ、くぅ……ん」 「平気?」 「う、ん」  平気じゃない。 「痛いとこ、ない?」  君でいっぱいになってて苦しいよ。 「へ、気」  息もできない。 「佑久さん、息、して」 「ふ、ぅ……ん」 「口、開けて」 「あ、ふ」 「ここ」 「ふぁっ」  言いながら、和磨くんの唇が僕の唇を抉じ開ける。舌が差し込まれて、ちゅぷ、って唾液を掻き混ぜながら、呼吸をさせてくれる。キスの合間に、ほら、って促すように優しい舌に口の中を開かれる。 「あ、和磨、くん」 「うん」  僕の身体の、僕も知らない所がいっぱい開いて、君のを中で感じる。熱くて、太くて、大きくて、すごく苦しいくらいに僕の中が君でいっぱいになってる。それが。 「嬉し」  それが、気持ちいい。 「……佑久さん」 「僕」  今度は僕が君のおでこにおでこで触れた。コンって、触れて、きっと君の熱を身体の奥で感じててるせいで、同じくらいに熱くなってる吐息で、君の唇にちょっとだけ触れた。 「嬉しい、よ」 「……」 「すごく、気持ちいい、から、あっ」 「っ」  ぎゅって抱き締めれらながら、奥がいっぱいに貫かれた。 「あぁぁっ、あ」 「今の、は、反則」 「あぁ、あ、あっ、ひゃ、ぅ……ん」 「っ、やば」 「あ、あ、あぁあ……あ、和磨、くっ……」  濡れた音と、僕の変な声。 「佑久さん、気持ち良さそうな声」 「あ、やっ、変」 「変じゃない。我慢しないでよ。手で抑えないで」 「ひゃあああっ」  下からズンって突き上げられた。抱き抱えられている僕はその衝撃を身体のどこにも逃せなくて、奥深くに彼が突き刺さって、変な甘ったるい声が勝手に口から溢れた。 「あ、あ、あっ」  奥深くに和磨くんがいる。 「あぁっ」  中を指よりもずっと太い塊で擦り上げられてる。 「ひゃうっ……ぅ、ん」  あんなに、僕の指は一センチくらいしか入らなかったそこにこんなに和磨くんのが入って、奥を突いて、引き抜かれかけて。 「ヒャアア、あ、あ、あ」  また入ってくる。 「佑久さん、すげぇ、トロトロ」 「あ、やだ……僕、変な顔、見ちゃ、やだ」 「やだ」 「あ、ああ」 「見せて、すげぇ」 「あ、あ、あ、ダメ、ダメっ」  和磨くんが僕の中にいるのが、たまらなく。 「あ、あ、あ」 「可愛い」 「あぁっ、ダメっ、もっ、あっ、ダメっ」 「っ、佑久、さんっ」  たまらなく気持ちいいんだ。 「あっ……」  和磨くんでいっぱいになれて、すごく。 「和磨、くん」  気持ちいいんだ。

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