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第46話 ヤバ、可愛すぎ

 もうすぐで五月になる。  それでも朝の空気はまだタオルケットだけで十分な夏には程遠く。春に少し近く、爽やかで清々しい。 「……」  風邪、引いちゃわないかな。  心配だ。  もしも風邪なんて引かせてしまったら僕は百六十万人に叱られてしまうし、僕も絶対に嫌だ。  歌を歌う人なのだから、喉を悪くしてしまったら大変だ。  それに、和磨くんは僕の大事な人、なんだから。  だから、そっと、そーっと肩に布団を掛け直してあげた。  やっぱり昨日、無理をしてでも、コンビニに行ってくればよかった。  ――マジで大丈夫。  そう言って和磨くんが頑なに肌着を買いに行こうとするのを断るから、仕方なくコンビニに買いに行くのは断念したんだ。  ――平気だって。風邪なんて引かないし。佑久さんが一緒に寝てくれるから、大丈夫。  ただの添い寝程度では大丈夫じゃないと思うから、ぎゅっとくっついて眠ったんだ。 「……」  あったかい。 「……」  僕は休みだけど、和磨くん、今日も大学だよね。服、もう乾いたかな。たまにまだこの時期だと乾いてないことあるんだよね。乾燥機付きの洗濯機にしておけばよかった。服も買っておけばよかった。次までに。 「……」  次、の時のこと考えちゃった。  普通に、次、和磨くんがうちに来ることを考えちゃった。服を用意しておいてあげようって。  なんか、ちょっと。  すごいことだ。  すごいな。  二回も、結ばれて。  三回目がある時のことを考えているの。  なんだか、信じられないけど。 「……」  次はどっちのうちかな、なんて。  僕の部屋にまた和磨くんが来るなら、洋服も準備しないと、なんて。 「……限界かも」 「! か、和磨くん?」  起きて?  え?  寝てた、でしょう?  目。 「!」  びっくりしてぎゅっとくっついていた僕は顔を上げた。と、同時、ぱちっと和磨くんが目を開けて。 「そんなに擦り寄られるとさ」  わ、あ。わぁ。わわっ。  目が合った……よ。 「それでなくても、俺、裸なんで」  知ってるよ。  今はまだ風邪を引かせてしまったら大変だから僕もぎゅっと添い寝をしているけれど、ちゃんと起きる時になったら、外に干した洗濯物を取りに行ってくるから。服はわからないけれど、パンツなら乾いてると思うし。乾いてなかったら、それこそ今度こそはコンビニに行ってきます。  そして、次、うちに来る時までにはちゃんと服を用意。 「すぐに、襲えちゃうのに」 「!」  普通、裸になっている人が襲われるのでは? 「佑久さんって少し体温高いよね」  ? そう、ですか? 「あったかい」 「ひゃふ」  素肌の和磨くんが僕の上に覆い被さって、僕の首筋にキスをした。くすぐったがりの僕は肩をキュッと縮めながら、くすぐったい時の笑い声とは違う声をあげて。 「っぷは」 「?」 「佑久さんのそういう声もすげぇ好き」  この変な声? 「たまんなかったりする」 「? っ、?」 「今日って佑久さん休みでしょ? 何も予定ない?」 「っ、ン、あ」  わ。和磨くんのほどよく温かい手が僕の家着の中に侵入してきた。  わぁ。指先が優しく、僕のお尻、の。 「ない、よ」  割れ目のとこ、を。 「もし、ここ、しんどくなかったら」 「う……ん」  そっと手を伸ばした。素肌の和磨くんの首をそっと撫でると、少しだけ驚いたように僕を見つめてから、和磨くんが小さく耳元で「ヤバ……」って呟いてから、耳にもキスをして。 「ん」  手が今度は僕の薄っぺらいお腹を撫でた。昨日、君がいたとこ。 「平気だよ」  今度は僕がそっと呟いてから、微笑んでいる唇にキスをした。 「……しても」  そっとキスして、そっと呟いた。 「あっ、ン」 「気持ちい? ここ」  くすぐったがりの僕は。 「ん、なんか……気持ち、い……よ」 「ヤバ」 「ぇ? ごめ」 「じゃなくて」 「あっ、ぁっ」  乳首、なんて気持ち良くなるのは変なのかと慌てた。 「佑久さんが可愛すぎてヤバいってだけ」  けれど、違ったらしい。 「あぁ、ん」  和磨くんのキスが服を捲り上げられた僕の胸の、ち、くび……をたくさん吸ってくれる。 「あ、和磨くん」 「?」 「あんまり、吸っちゃダメ」 「……」 「ここ」  そっとお腹を撫でてくれる手に手を重ねた。  君がいたとこ。 「ちく……び……されると、奥が、きゅってするから」  そこを一緒に撫でて。 「あんまり吸っちゃ、ダメっ……っ」  僕らは笑いながら深く深くキスを結んだ。 「大学、間に合う? 朝ご飯食べるよね」  ちょっと、その、朝から本当に、なんというか。 「ごめんね、今、朝ご飯を」 「ん、平気だよ。つか、俺が朝飯作るよ、つってもたいして作れないけど、佑久さん、夜と朝両方で身体しんどいでしょ?」  あの。 「パンとか焼くくらいだけどさ。あ、卵とかあったりする? そんくらいなら俺できるからさ」  服。 「ちょっと待ってて。寝てていーよ」 「え、ええええええ?」  着てる。カバンから服出して、服着てる。 「な、なんでっ、和磨くん! 服!」  持ってきてたの? 持ってきてるようなこと昨日言ってなかったのに。持ってきてた。 「っぷは。佑久さん、寝癖すごい」 「!」 「やば、めっちゃ可愛い」 「!」  服持ってきてたなんて。 「だから買わなくてへーきって言ったじゃん」 「!」  嬉しそうに笑いながら、唇が唇に触れた。 「俺の裸に、佑久さんをムラムラさせよう作戦」 「!」 「けど、思ってたよりも佑久さんが可愛すぎて、破壊力すごかった」 「!」  そして、今度は大きな声で笑いながら、和磨くんが僕の寝癖がすごいらしい髪にキスをしてベッドから元気よく飛び出した。

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