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第92話 君に夢中なのだから

 僕がこんなことを思うなんて、信じられないよ。  裸で、ベッドの上でこういうことをする自分だって、きっと去年の僕が見たら、君に出会う前の僕が見たら、びっくりしすぎて卒倒してしまうかもしれない。 「……ふふ」 「? 何、急に笑って」  早く、欲しい、なんて。 「佑久さん?」  ベッドの上で裸になって抱き合いたい。早く彼と結ばれたい。  早く、彼のが、欲しい……なんて。  僕は思ってたりしてるんだ。 「和磨くんと、できるの、嬉しいなぁって」 「!」  ベッドへ移動して、ドキドキしながら君が今から来てくれることに胸を躍らせていた。 「? 和磨くん?」 「………………」 「あ、の、どうかし、」  どうかしたの? そう訊こうと思った。和磨くんが、突然、ガクッと項垂れた。僕は君がもう来てくれるのだと待ち構えていたから、慌てて、起き上がろうとして。 「んあああああ! マジで! なんなの! 佑久さん!」  そしたら、君がガバッと顔を上げた。 「え? あ、何」 「イクとこだったじゃん」 「え?」  和磨くん、顔が真っ赤だった。真っ赤になって少し怒ったような顔をして、のしのしと僕の上にやってきて覆い被さるようにしながら、キスできるすぐそこまで唇を寄せて、そんなことを呟いた。 「何、そのかっわいい顔で笑って、何言ってんの」  何、と。 「ね、佑久さん」  はい。 「俺が忙しかったから、俺は言うの違うと思うから言わなかっただけで」  はい。 「俺もすげぇ会いたかったんだけど」  あ。 「佑久さんの顔見たかったし」  うん。 「佑久さんと話したかったし」  うん。 「キスもしたかった」  うん。 「佑久さんと」 「……」 「すげぇ、したかったよ」 「……ン」  低く囁きながら、和磨くんの手が僕の脚を抱き抱えて、身体をその脚の間に割り込ませる。ずっと、きみを待っていたそこに、硬い先端が触れて、濡れた音がして。 「ン」  キスをしたまま、ずぷずぷと君が割り込んで来た。 「あっ」  割り込んで、抉じ開けられて。 「キッツ……佑久さんの中」 「あ、あ、あ、和磨くン、ンンっ」  キスの合間息継ぎをして。それからもっと奥に和磨くんを感じていく。 「すげ……気持ち、ぃ」 「あ、あぁぁっ」  和磨くんでいっぱいになる。 「っ、ん、ンンンンンっ」 「っ」  嬉しくて、幸福感に溶けちゃいそう。 「ヤッバ……佑久さん」 「っ、あっ……あっ」 「挿れただけで、イっちゃった?」 「ぅ、ん」 「佑久さん」  和磨くんがとても好きで。 「平気? 中、すげぇ、熱い、一回」 「あ、へい、きっ」  ぎゅってしがみついた。 「佑久さん? まだやめないよ。水、持ってくる。シャワー浴びてそのまましたから、水」 「い、い。くっついて、たい」 「……」  もっと、ぎゅって。 「離したく、ない、です」 「っ」  僕は君に夢中なんです。とにかく大好きで仕方ないんです。だから、お願い。 「あんま煽らないでよ」 「あっ」  和磨くんの重さが僕にのしかかる。  ぐりって、深く、先のところが僕の奥を撫でるように擦り上げてくと、ゾワゾワってした。 「動いてい?」 「ぅ、ん……あっ、ン」 「佑久さん」  溶けちゃいそうだ。 「あっ」 「っ」 「やぁっ……あ、あ、そこっ」  覆い被さられてその背中に腕を回してしがみついた。ピッタリとくっついたまま繋がった身体の一部が溶けちゃったみたいに濡れた音が和磨くんのベッドの上に響いてる。すごく早くて、僕の鼓動と同じくらいせわしない音。 「あ、あ、あ」  僕、の、本当に溶けちゃったみたいだ。ずっと、熱くて、ずっと、溢れてる。君に激しく奥を突かれる度に中が締め付けて、狭くて苦しくて、なのに、たまらなく気持ち良くて。  おかしくなっちゃいそうだ。 「あ、あ、やぁっ、あっ、あぁっ」 「ね、佑久さん」 「あ、待っ」  一番奥のとこ。 「もっと奥、入ってもいい?」 「ぇ? あ、お……く」 「うん。一番、奥のとこ」  和磨くんに腰を強く掴まれると、気持ちがきゅぅって苦しくなる。捕まえてもらえるって、嬉しくて。まるで逃げたらダメと叱られているようで、それは僕が君に夢中すぎて、独り占めしたいと思っているのに似てる気がして。  嬉しすぎて、気持ちいいが増していく。 「挿れたい」  切なげな声。僕の好きな、オオカミサンの少し掠れた声に、感じる。すごく。 「い……よ」  額、コツンってして、君がおねだりをしてくれた。吐息が唇に触れるくらいに近くで、好きな人を見つめる。 「っ」  僕が、キュって、力を入れると和磨くんが眉をしかめた。 「ちょっ」  締め付け、気持ちいい? 僕の中の感触に君が小さく表情を変えてくれるの、嬉しくてたまらないんだ。君が僕の中にいて、僕の中で気持ち良さそうにしてくれるなんて。 「和磨く、ぅ……ん」  最高だ。  僕がそれをイヤなんていうわけない。 「挿れ……て」 「っ」 「奥に」 「いくよ?」 「う、ん」  あ、すごい、力。  腰、引いてしまわないようにって和磨くんが体重をかけて僕を捕まえて、そして、そのまま太い熱で僕の一番奥って思った、そのもっとずっと奥の。  狭いとこ。 「あっ……ぁ」  すごく狭くて、きっと、絶対。 「あ、入っちゃ、ぅ」 「うん。一番奥、俺の、全部」 「あぁ、そこ、ダメ」 「俺の、全部、佑久さんの中に」 「あ、あ」 「入れさせて」  和磨くんしか入れない場所に入りたがってくれるなんて。  和磨くんのことこんなにたくさん感じられるなんて。 「あ、あ、ああああっ」  最高だ。 「っ、佑久さんっ」  僕はとにかく。 「あ、あっ」 「佑久っ、さんっ」 「あ、あ、ん、あ、奥、そこ、イッちゃうっ」 「っ」 「あ、イっちゃうっ」  君が好きで仕方がないんだから。 「イっちゃうっ」 「っ」  君に夢中なのだから。

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