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メリークリスマス 4 愛がある

「そんで? そっくりで?」 「な、なので」 「うんうん」  手をぎゅっと握ったまま、少しいつもよりも早歩きをする和磨くんに合わせて、早歩きと、駆け足を交互に繰り返した。僕が帰りを急かしてしまったから、凛花ちゃんのところから早く遠くに行きたくて、帰りにお手洗いに行きたいかどうか確認もしないで連れ出してしまったから、もしかしたらお手洗いを我慢させちゃったのかもしれない。  とにかく和磨くん、歩くの、速い。 「そんで? 甥っ子の子が? 佑久をリーカって間違えるくらいに似てて?」 「う、うんっ」  すごくすごく速い。  あ、でも、姪っ子、です。だから、姪っ子の子、です。 「親戚も間違えちゃうくらいだから?」 「うんっ」  すごくすごく速いから。 「俺が凛花ちゃんのことを好きになっちゃうこともあるかもしれないと?」  もう、部屋、着いてしまった。 「ぅ……ん」 「ふむふむ」 「っ、だって」  部屋の鍵を君が開けてくれる。手は繋いだままだったし、駆け足混じりだったから息が切れちゃって。 「あ、あのね」 「うん」 「和磨くん、僕以外は、彼女さん、だったでしょ? その女の子。だから、その……僕の、あの、顔が特別いい顔って思ってるわけじゃないよっ、そういうことじゃなくてっ、あのっ、つまりは」  誰かの好みになれるほどに整った顔をしてるなんて思ってない。思ってなんていないけれど、でも、僕に似ている凛花ちゃんは女の子だから、和磨くんのそもそもの恋愛対象エリアにいるから、なんていうか、その――。 「いっこだけ」 「は、はい」 「佑久以外は、じゃないよ」 「?」 「佑久以前は、だ」 「……」 「そんで、以後はなし」  それは、その。 「佑久の顔、すげぇ好きだよ」 「!」 「けど、それは佑久だからでさ。佑久の中身だから、佑久の顔が好きなの」  和磨くん、笑ってる。玄関のところで。まだ手を握ったままだったから、靴が脱げなくて、僕らのうちなのに、僕らは玄関のところで立ち話をしてた。  そして笑ってる。 「オッケー?」 「お……けー……です」  楽しそう。 「やば」  わ。 「これ、すっごいね」  まだ僕らは、玄関のとこ。靴も脱がずに。繋いでた手を解いてすぐぎゅっと君が抱き締めてくれたから、僕は捕まえられていた手を君の背中に回して、ぎゅっと君のパーカーを握り締めた。 「佑久のヤキモチ」 「ご、ごめっ」 「ごちそうさまです」 「! こ、こちらこそ、です」 「っぷは」  変な挨拶してしまった。でも、だって、ごちそうさまですって言われて、お粗末さまです、も、お口に合いましたでしょうか、も、なんだか変だったから。 「ね、佑久」 「は、はい」 「今日の水炊き、俺が作るからさ」  え、でも一緒に作ろうよ。二人で食べるんだもの。 「その前にしちゃ、ダメ?」 「!」 「ヤキモチ佑久としたい」 「ぁ……えっと」  頬が急に熱くなった。  だから、僕は君の胸の中に隠れるように俯いて、しがみつきながら、小さくコクンと頷いた。きっと、僕の髪が君の顎のあたりをくすぐってしまったんだと思う。  君は笑いながら、僕に優しくキスをしてくれた。 「あっ……ンン」  やっと靴を脱いだ僕らは、ベッドに一緒に寝転がった。 「あっ」  君が僕の服を捲り上げると、ドキドキしている胸にキスをしてくれる。薄っぺらいお腹のところを温かい大きな手のひらで撫でながら、触られるとたまらない心地になってしまう。乳首にキスされて、キュって、お腹のところが熱くなった。 「ひ、ぅ……」  気持ちい。 「佑久……」 「あ」  この時の和磨くんは気持ちがとろとろに蕩けてしまうくらいにかっこいいんだ。ちょっと色っぽくてね。いつもすごく楽しそうに、すごく純粋に笑ってくれる優しい唇が触れると溶けてしまいそうなくらいに熱くて、溢れる吐息も熱くて、濡れてて。 「あ……う……ん、ン」  舌が溶けちゃいそうなんだ。そして、唾液がたくさん溢れてしまって。 「佑久」 「っ、あっ」 「…………あのさ」 「は、い」  クラクラする。 「はぁ……」 「? 和磨、くん?」  大きな溜め息に僕は戸惑いながら、君を見上げた。 「ね、もしかしたら、準備、した?」 「ぁ、うん。今日、午前中に、掃除と洗濯とかして、一生懸命動いたから汗かいちゃって、シャワー浴びて、それで、準備したよ。夜、できるかなって思って」 「…………」 「あの、明日は、和磨くん、動画取るって言ってたの、お昼過ぎからだったし、僕も遅番だったから」 「…………絶対に」 「?」  和磨くん、顔が真っ赤だった。 「絶対に、佑久以外なんて、ないよ」 「……ぁ、りがとう」 「すっごい好きだから」 「あ、うんっ」 「顔も」 「っ、うんっ」  切先が僕に触れる。僕の一番敏感で、一番恥ずかしいところに。 「声も、言うことも、やることも、全部」 「ぁ、あぁっ」  そのまま君が僕の中に来てくれる。 「あ、っ、ンっ」 「すっごい好き」 「あ、あ、っ」  小刻みに中を擦られて、奥がキュンキュンした。 「佑久」 「ひゃあっ、ふっ……ン」 「好きだよ」 「僕も」  気持ち良すぎて、指先がジンジンしていて、力があまり入らないけれど、どうにかして、背中に手を回してしがみつく。 「和磨くんのこと、好き」  ぎゅって、抱き締めながら。 「好きっ」  君の律動に合わせて揺れる声で、夢中になって伝えた。 「あっ、ンン」  君のことがとにかく、何より、大好きなんだって――。

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