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メリークリスマス編 17 彼らはとても嬉しそう

 二人でクリスマスパーティーをした。  大慌てで買った苺のショートケーキを食べながら、来年は予約しないとだねって話して。  来年って言葉に、二人してニヤニヤして。二人して、相手がニヤニヤしていることに、また口元を緩めて。  笑っていた。  来年も一緒にクリスマスを過ごすんだねって、思ってた。  お鍋にケーキ、どっちも美味しくて、二人だけのクリスマスパーティーを満喫した。それからお風呂に入って、指先までポカポカになった。 「ありがとうね。和磨くん」 「……」  そう言いながら、和磨くんに見せびらかすようにお手製の巾着を持ち上げて、そっとテーブルの上に置いた。  お揃いのイヤホンだ。  和磨くんの大事なイヤホンとお揃い。  そして、君からの「俺の歌を聴いて」っていう気持ちがピカピカキラキラ、これでもかってくらいに輝いてる。  ふふ、って笑ってしまう。  だって、今、君がなんとも言いようのない顔をしたから。 「もおおおっ、佑久」 「うん」 「ああああ、もおおおお」 「うん」  恥ずかしそうだ。  クスクス笑いながら、和磨くんにキスをした。  これで「オオカミサン」の歌を改めて聴いたら、僕、他の人の歌なんて聴けなくなっちゃうんじゃないかな。  だから、そんな心配することないのにね。「オオカミサン」の歌をもう聴かなくなる心配なんて。けれど、君がそんな心配をしてくれることが嬉しかった。自分の歌を聴いて欲しいっていう気持ちとか、もっと欲張りになってもいいのに、きっと今までの君なら、聴く側の自由だからって、そんな欲張りな気持ちをパッと手放してしまっていたと思うから。 「聴きます」  言われなくたって、たんまり、たっぷり、ずっと。 「ふふ」  まずは、せっかく練習してくれたんだもの。それを聴かなくちゃ。それから、とてもお気に入りで大事な「ハル」も聴くでしょう? この前、コラボしてたのもすごくかっこよかったからまた聴きたいな。あと、あの屋外ライブで歌った「タスク」も。あれは、和磨くんが僕に向けてメッセージをくれたところも動画に残ってて、そこだけ、どうしたらいいのかわからなくなるくらい気恥ずかしくて、くすぐったくなるけれど、でも、うん、このイヤホンで聴いたらきっとすごいよ。 「あとでね」 「えぇ、でも」  あとで? なの? 「あとで」  イヤホン、くれたのに。 「佑久」  抱き締めてくれて、その腕の中で聴くことのできる低い声に、胸がときめいた。 「あっ……」  そして、苺のショートケーキよりも甘い甘い気持ちが込み上げてくる。 「和磨、くん」  蕩けていく感じ。  気持ちも、身体も、ふわふわな生クリームみたいに解けていく感じ。 「あっ……」  僕らのベッドに二人で寝転がって、僕の上に君が覆い被さる。心地いい重さにときめく胸が締め付けられて。 「和磨くん……」  君がじっと僕を見つめながら、頭を撫でてくれた。 「髪サラッサラ、すげぇ気持ちいい」 「あっ……」  不思議だ。髪の毛って神経、通ってないはずなのに。通ってたら大変。切ってもらう時に痛くて仕方ない。だから、神経なんて通ってないのに。 「ンンっ」  君に撫でられると気持ち良くてたまらない。 「マジでさ」 「あっ……」 「佑久のこと、好きだよ」 「ひゃっ、あっ」 「すげぇ、好き」  手の甲にキスをしてもらうと、胸が締め付けられて苦しいくらいに、恋しさが込み上げてくる。 「和磨くん」  なんて素敵な気持ちなのだろう。 「うん?」 「僕も」  君に出会ってから、一番の大発見なんだ。 「大好き」  恋はとても素敵なもので。 「だから……」  とても欲張りで。 「あの……」  とても――。 「ホント、すげぇ好き」  誘い方なんてわからない僕は君をメロメロにする良い台詞を思いつけなくて、もじもじしながらも手を伸ばした。 「触って、佑久」 「あっ、あ」  覆い被さる和磨くんの腕の中で、僕は手を下腹部の方へと伸ばした。そして、和磨くんが自分で下着とルームパンツをずり下げると、僕の手の甲に跳ねるように飛び出した和磨くんのが触れた。  そっと、それを握って。 「はっ、すげ、佑久の手、気持ちー」 「ぁ、ホント?」 「っ、ん、すげ、もうガチガチになってるでしょ?」 「う、ん」  すごく硬くなってく。手で撫でて、手のひらでギュッて握って。 「っ」  上下に手を動かすと、すぐそこで、和磨くんが息を詰めてくれるのがわかった。乱れてく吐息も、手の中で張り詰めていく和磨くんのも、全部、僕がしてあげてるんだって思うとたまらなくて。 「佑久……」  僕が今、こんな顔を和磨くんにさせてるんだって思うと、嬉しくて。 「あっ、待っ」  ドキドキした。そのドキドキしている胸に服越しでもキスをされると飛び上がってしまう。それから、服を捲り上げられて、直にキスをしてもらうと、お腹の下、身体の奥がギュッて締め付けられるように切なくなった。 「あ、うっ……あ、ひゃ」  胸にキスをされながら、心臓の音を聴かれてしまう。ドキドキして、今、すごいんだ。 「あ、あぁっ」 「昨日も、一昨日もしたから、柔らかい」 「あ、あ、あ、指ぃっ」  君に出会ってから一番の発見。 「あ、指っ」 「うん」 「あ、和磨くん」  僕は和磨くんとするこの行為がね。 「和磨くんの、早く……欲しい、ょ」  僕はとても好きなんだ。

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