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ヤキモチも美味しい秋編 3 本の虫は
可憐の意味、和磨くんわかってないんじゃないのかな、なんて思っちゃうくらいに、僕はこれっぽっちも可憐ではないけれど。
「あっ、和磨、くんっ」
でも、もしもちょっとくらいでも、君のことを魅了できる何かがを持っているのなら嬉しいな。
「ア、ン……っ」
自分では全然見つけらないけれど、和磨くんに見つけてもらえてるのなら、嬉しいな。
「あ、っ、ン……ン」
首筋にキスをしてもらうとちょっとくすぐったくて、つい、肩を僅かに竦めてしまう。せっかく僕にキスしてくれるのに、君のことを邪魔してしまってもったいないって思う。
ね、こんな時だって僕は、自分がくすぐったがり屋なせいでちっとも色っぽくなんてできなくて、君のことをその気にさせるの、ちっとも上手じゃないでしょう?
「和磨くん……」
こうして君のことを呼ぶ時、もっと甘くてドキドキしちゃうような声を出せたらいいのにって、いつも思う。
「あっ」
だから抱き締めてもらえた時に君の身体が火照っていると、鼓動が早くなっているのを感じられると、ホッとするんだ。触れて反応してもらえてるのがわかると、すごく嬉しくなるんだ。
君が、その、つまり、僕のこと。
「……ぁっ」
僕と同じように、欲しい、って思ってくれてるんだって。
「佑久」
「あ、和磨、くんっ」
「うん」
「和磨、くっ、ン」
僕の中に指で触れてくれる時に。
「っ、ン、ンっ、和磨くンっ」
君のが熱くなってくれると、すごく嬉しくて、すごくホッとするんだ。
君が僕としたいって思ってくれてるって感じると、すごくすごく嬉しくて、たまらなくて。
そして、下腹部のあたりがキュッと熱くなる。
その熱さは、本の虫の僕の語彙力を乏しくさせてしまうくらい。
すごく嬉しい、しか頭の中にないくらい。
君と出会うまではわからなかった感覚。味わったことのない気持ちなんだ。
和磨くんの脚に跨るように座りながら、男性特有の筋肉質な腕に抱っこされてる。少しだけ腰を上げて、君にしがみつきながら、後ろに回された手に中を撫でてもらってる。
とあるところを撫でられると勝手に身体が跳ねて、気恥ずかしくて、きっと真っ赤になっているだろうし、気持ち良くて変な顔をしている気がするから、その肩に顔をくっつけて隠したくなる。
いまだに照れるし、恥ずかしい。
「あっ、っ、っ」
「気持ちい? ここ、佑久の中、キュンキュンしてる」
「っ、う、ン」
けれど、身体を重ねる度にどんどんおかしくなっちゃうんだ。指でしてもらうのさえ、すごくすごく気持ち良くなっていて。僕の身体はどうなってしまうんだろうって思う時があるくらい。
こんなにそこかしこが敏感になって、気持ちいいという快感を拾えるようになってしまって。
「あっ」
僕は大丈夫なのかなと、困ってしまうほど。
「あ、指っ」
和磨くんのくれる全部が気持ちいい。
中を撫でてくれる指も、キスで触れる吐息も、何もかも。
「あ、ンっ」
とろけてしまうほど気持ちいい。
「はぁ」
「?」
溜め息が唇に触れた。
「ぁ、和磨、くん?」
「……すぎ」
「? あの、何?」
今、なんて? そう、肩にしがみつきながら覗き込んだ。
「指、抜くね?」
「ン、あっ……」
そっと優しく指が引き抜かれて、そして、一度、唇にキスをしてから、ぎゅっと抱き締められたまま、ゴロンと一緒にベッドに転がった。
「っ!」
和磨くんが下になって、僕が上に。
ちょっと、どころではなく、僕にとってはとても大胆な体勢に顔が急に熱くなった。君の上に乗っかるなんてって。驚いて緊張してしまう。
「可愛すぎ」
「え?」
「さっき可愛すぎって言ったんだ」
え? 僕が? でも、今、可愛いなんて思ってもらえるようなところひとつもなかったよ。
「ちょっとだけ、前に倒れて」
「え? わっ……っ、ン」
手が背中を押して、バランスを崩してしまった僕はそのまま和磨くんの上にうつ伏せで寝転がるような体勢になってしまう。慌てて、どこうとしたけれど。
「あっ……ぁっ」
胸にキスをしてもらえた気持ち良さに抗えなくて。
「あ、ンっ」
「……オッケー。準備できた」
「?」
「このまま」
「!」
気がつくと、和磨くんが避妊具を装着し終わってて。僕は、つまり、このまま腰を。
「ぁっ……」
気恥ずかしいのに。
「あぁっ」
どうしたらいいのだろうって戸惑うのに。
「あ、あ、あ、和磨くんっ」
そんなのが溶けちゃうくらいに、僕は何より。
「あ、入っちゃうっ」
「うん」
和磨くんと繋がりたくなってしまうんだ。
「あ、あぁっあっ」
「っ」
ゆっくり自分から腰を下ろした。
中に和磨くんがいて、僕の中が、ほら、あの……ねぇ。
「すげ、気持ちい」
「あっ」
「佑久」
「あぁっ」
下からクンって突き上げられて、奥がキュンってした。
「あぁっ、和磨くんっ、和磨、くんっ」
「佑久」
「う、ンっ」
和磨くんに名前を呼んでもらえると、すごくすごく幸せな気持ちになれた。
「う、ん、うんっ」
大好きで、たまらなくて、愛しくて。
「和磨くん」
本の虫なはずの僕は、君の名前しか言葉を知らないみたいに、何度も何度も愛しい名前を呼ぶばかりだった。
その名前を呼びながら、その肩にしがみつくばかりだった。
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