166 / 167

ヤキモチも美味しい秋編 12 恋しい、愛しい

 なんてことだろう。  とても嬉しくて舞い上がってしまう。  和麿君はなんでもできて、なんでもすごくて、どんな時だってかっこよくて。あんな大勢の前ですごく素敵な歌を歌うこともできる人なのに。  僕だったら、あんな大勢の人の前に立っただけで緊張で心臓が止まってしまうもの。  そんな君の「初めて」が、もらえたんだ。  ―― 好きな子が別の奴と話してるのがイヤとか思ったの、初めてだった。  嬉しくてたまらないよ。  ―― あんなふうに、勝手に身体が動いたの、初めてだった。 「和麿くん」 「?」  君に「初めて」のことをしてもらえたなんて。嬉しくてたまらないんだ。  お風呂上がり、まだ、同窓会で飲んだお酒が残ってるのかもしれない。身体の奥がすごく熱くて、指先はふわふわしている。心地良くて、なんだか楽しくて。  なんだかいつもよりもちょっと君と早くくっつきたくて仕方がない。  ベッドに腰を下ろしながら、まだ髪を拭いている最中の君を待ってるのが、ちょっと焦ったいんだ。  髪、ちゃんと乾かさないと風邪を引いてしまうかもしれないのに。 「僕、和磨くんが一番だよ」 「!」  今日は一緒にお風呂に入ったんだ。ちょっと煌々と明るいバスルームの中で裸でいるのは照れくさかったけれど、ちょっとも離れたくないと思ったから。  それに楽しかったよ。  一緒に身体を洗いながら、市木崎くんにからかわられた時のことを教えてもらったり、僕がオオカミさんファンの同級生と話しが盛り上がって、しばらく話し込んでしまったことを教えたり。僕がこんなにお喋りだなんて思わなかったと言われてしまったこととか。  君のこととなると饒舌になるらしいよ、と言ったら、少し照れくさそうにしてくれた。  そんなふうに、よく響くバスルームの中であれこれ他愛のない話をするのはとても楽しかった。  僕は君のおかげで色々なことが変わったんだ。  和磨くんは僕にたくさんの「初めて」をくれた。 「僕、和磨くんがずっと大好きだから」  僕をお喋りにしたのは和磨くんで。 「だから、その、心配しないでください」  僕を同窓会に行ってみようって思わせてくれたのは和磨くんだし。 「よそ見なんて、しないよ」  僕に、ね。 「和磨くんしか見てません」  キス、したいなぁとか、もっと、もっと触れたいなぁって気持ちを持たせてくれたのも、和磨くんなんだ。 「……ね?」  僕が、自分からキスをするなんてこと、君と出会う前には想像もしなかったよ。  そっと口付けた。すぐそこで、触れ合う鼻先がくすぐったくて、微笑みながら。じっと覗き込んだら、君の瞳の中に僕が写ってる。  まだ濡れて、しっとりとしている柔らかい銀色に指先でちょこんと触れると。 「……ン」  今度は和磨くんがキスをしてくれた。  深く、しっかりと。  それから腰を引き寄せられて、膝の上に座らせられた。身体を密着させながら、 「ん」  ドキドキする甘いキスを。 「んっ……っ」  首筋に唇で触れてもらえると、気持ちが柔らかくなるんだ。  なんて説明したらいいのか、本の虫の僕でもちょうどいい言葉が見当たらないのだけれど、とにかく柔らかくて、優しくて。けれど、その奥に熱くとろりと蕩けた濃厚なチョコレートソースみたいな甘さが潜んでる。そんな気持ち。 「あっ……和磨くんっ」  僕にもそんな気持ちが生まれるんだって、教えてくれた。 「佑久……」 「あっ」  中を優しく指が撫でてくれる。 「ぁ、そこっ」 「い?」  そっと問われて、コクンと小さく頷くと、優しく微笑みながら僕のことを抱き締めてくれる。 「あ、の、髪は? まだっ」  乾かさないと、でしょう? 「へーき」 「あ、っ和磨くんっ」  濡れたままじゃ。 「あとでもう一回シャワー浴びるし、それに」 「っ、あ」  ダメでしょう? そう思うけれど、今日の僕は少し我儘だから。 「佑久の中が熱くて、きっと、汗かくから」 「和磨くん」 「髪、濡れたままで大丈夫」  少し我儘だから、早く君のことが欲しくてたまらないんだ。 「僕……」  自分から腰を浮かせた。 「あの、ね」  心臓がドキドキしてる。  君と繋がる瞬間はいつもそうなんだ。緊張じゃなくてね。 「大好き、だよ」 「っ」 「あっ」  君とするこの行為はたまらなく気持ち良くて仕方がないから。 「あぁっ」  早くしたくてたまらないんだ。 「あっ、あっ」 「っ、佑久っ」 「あ、和磨、くんっ」  早く君を中で感じたくて、ドキドキするんだ。 「あぁっ、あ、ンっ」 「っ、中、すげ」 「ぁ、和磨、くん、気持ち、い?」  ねぇ、僕の中は気持ちいい?  そう尋ねながら、辿々しいと思うけれど自分から腰を揺らしてく。恥ずかしいけれど、それよりもずっと、ずっと。 「あ、あっ、和磨くんっ」  君を中で感じられるのが嬉しくて、好きなんだ。 「佑久っ」 「あ、和磨くんっ、もぅ、僕」 「一緒にイク? 俺も、佑久の中が気持ち良すぎてもたない」 「あっ」  強く抱き締められてそのままベッドに沈み込んだ。 「ン……ん、ン」  覆い被さられて君の重みを受け止める。 「あっ、僕、も、イッちゃう……ン」  ぎゅっと抱き締めたら、ぎゅって抱き締め返してくれる。 「和磨くんっ、好きっ」 「俺も」  気持ちを伝えると、言葉で、キスで、熱で答えてくれる。 「あ、あ、あぁっ」 「すげぇ、好き」  奥がとろりと蕩けてく。  甘くて、おいしくて、熱い。  この行為が僕はとても好きで。 「佑久」  まだまだ離れたくないな、ってしがみついた。

ともだちにシェアしよう!