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第6話
疲れを取りたいと思っているのに、ついつい胸を大きく撫で上げ、乳首のコリコリした感触を楽しんでしまう。
「んふぅ……」
眠そうな、だけど満足げな大浦さんの吐息。
「大浦さん……気持ちいいですか?」
悪戯めいた笑みが浮かぶ。
「はぁ…気持ちいいけど、もういいよ。気持ちよすぎて寝てしまいそうだ」
「今日はイベントでお疲れでしょう。いくらでもマッサージしますから、寝てていいですよ?」
「バカ、酒飲んでサウナで寝たら死ぬって」
「ああそうか、それはダメです。でしたら大浦さんの部屋でマッサージしましょうか?」
そしてそのまま……。
「いやいやそこまでしてもらわなくても。これだけ揉んでもらったらかなり楽になった」
え………。
部屋に入るのは拒否……?
ラブホでもいいけど、僕はやっぱり大浦さんの部屋に行きたい。
「……なに?その顔」
「いや、大浦さんの部屋近いから、あわよくば泊めてもらえないかなって思ってたんです」
こういう時ははっきり伝えた方がいいはずだ。
「はっ……なんだそれ。ん~…いや、でもいいよ。お前一人くらいなんとでもなるし」
「大丈夫ですか……?大浦さん、彼女とか……」
だから最初僕が部屋に行くのを嫌がってたんじゃないだろうか。
「ああ、いない、いない。もう何年もないよ」
あっさり否定。しかも……。
「……『ない』…ですか?」
「あ、いや、そういう意味じゃなく……まあ、ほぼそういう意味だけど。まあ、そんなことはどうでもいい。最近帰っても寝るだけで部屋を散らかす暇すらないから安心しろ。洗濯物は溜まってるけどな」
喜びで頭が真っ白になった。
もう何年もしていない、その久々の相手として僕が……。
頑張るんだ、僕。
絶対に一夜限りの関係で終わらせちゃいけない。
一発に全てをかけろ!
……いや、それじゃダメだ。
俺は不発でも大浦さんに満足してもらうことに全ての神経を注ぎ、二発三発と求められるよう死力を尽くすんだ。
その後、もう一度水風呂とサウナを往復し、施設から出た。
適当にネクタイを結び、脱いだスーツの上着を小脇に抱え二人夜道を歩く。
シンと静まり返った夏の闇が、火照った体に涼しく感じた。
マンションまで歩いた十五分程度の間にも、通常モードの大浦さんと酔っ払い大浦さんが交互に登場する。
目がトロンとなった大浦さんがこれまでに増して愛らしい。
あまりに可愛いので、酔っ払いモードを狙って幼稚なセクハラ発言を繰り返してしまった。
「大浦さん、マッサージ気持ち良かったですか?」
チョンと指先で軽くワイシャツの胸を突いた。
「ん……サウナ?……うん、マッサージ気持ち良かったぞ」
「大浦さん乳首マッサージ大好きなんですね。気に入っていただけて嬉しいです」
「そっかぁ、うんうん。マッサージ……ありがとなぁ……」
ニコニコと子供っぽい笑顔を大浦さんがくれた。こんなバカバカしい会話ほど楽しくて困る。
フッと気づくと大浦さんの姿が後ろに下がっていった。
振り返ると大浦さんが電柱と向き合っている。
「え……何して……ダメ、ダメですよ」
「や……トイレするからいいんだ」
「さっき散々汗かいたじゃないですか」
大浦さんが電柱に向かって立ちションをしようとファスナーを開けている。
「トイレ……したい」
「家に戻ってからにしてください」
「今したい」
「ちょ…ダメですって」
とっさに大浦さんのモノを握っていた。
「……う……。したい」
か…かわいい……。大浦さんのねだるような目にハートを撃ち抜かれる。
けど、ダメだ。夜だとはいえ、他に誰が通るとも限らないこんな路上で、無料公開の放尿ショーだなんて。
「大浦さんの部屋まですぐですから。完全に僕と二人きりの時だけにしてください」
「……ミズホくんもする?」
「え、僕ですか…僕は……」
き…きてしまった……。大浦さんのマニアックな要求が。
放尿ショーを見せてもらう分には大歓迎だけど、僕が大浦さんに見られながら……う……うわぁ……マジですか……。
はぁ……正式におつきあいしてからならそうしたマニアックな要求にも積極的に応じたいけど、付き合う前だとなんでもヤる奴だと軽く見られそうで嫌だ……。
けど、応じなければ付き合いの悪いやつだと見限られてしまいそうで怖い。
いや、さっき決めただろう。
どんなにマニアックなことだろうと怯まないと。
自分のできる精一杯をやって、さらなるスキルアップを目指すって。
見られて喜ぶような性癖のない僕には大浦さんの期待を上回ることは難しそうだけど、でも不可能な要求ではない。
「よ、よし、しましょう。大浦さんの部屋で一緒に…ほ…放尿プレイ……」
う……言葉にしただけですごく恥ずかしい。
「そ、その代わり、僕のお願いもちゃんと聞いてくだいね。その、ですからさっきサウナで言った『大浦さんと一つになりたい』って言ったの、うやむやにせず本当にちゃんと……」
あ、大浦さんが電柱に抱きついてる。
「何やってるんですか。抱きつくなら僕にしてください」
「ん……ミズホくんに…」
電柱から引き剥がすと、反動でフラついた大浦さんがぎゅっと抱きついてきた。
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