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第3話

小学校最後の夏休み。 いつもは近所に住んでる幼馴染でいとこの犬飼音椰と普段の延長みたいな感じで朝から日が暮れるまで遊ぶのがほとんどだったが、おれの家には毎年、だいたい夏休みが始まってすぐくらいに父親と弟の絢人が2週間くらい泊まりに来た。 母親の違う、5歳年下の弟の絢人。 目の中がいつもきらきらしていて、おれはおかしいくらい輝いてると思っていた。 絢人はガキの頃からおれを『あにうえさま』と呼んで慕ってくれて、おれはそれが嬉しくて絢人の前では兄貴ぶったりもして。 絢人に会える時はいつも楽しい気持ちになって、絢人がずっと一緒にいてくれたら良いのに、なんて思う事もあった。 「兼輔、絢人、今日の夜は冒険に行くぞ」 絢人と地元の祭りを楽しんだ翌日の朝、父親が突然言い出した。 「わぁ!!父上さまと兄上さまと冒険、楽しそうです!!!」 「何だよ、冒険って」 「普段は立ち入り禁止の場所に入るからな、冒険だ」 「ちょっと、それって大丈夫なの?兼輔はともかく、絢人君に何かあったらアンタ、ますます立場ヤバくなるんじゃないの?」 話を聞いていた母親が朝メシの支度をしながら父親に言う。 「大丈夫だ。俺のチカラあってこそ成り立ってるっていう事、あいつらも分かってるから。それに、この冒険は必ずうまくいく」 「ならいいけど」 父親の一族は地元の観光業と不動産業を取り仕切っている金持ちとして有名で、母親も父親が金持ちでカッコよかったからおれを産むことにした、と、母親はおれが学校の授業で自分が産まれた時の事を調べて発表する事になった際に言った。 そんな事を学校で言える訳がなかったから、おれは母親から教えられた産まれた病院の事、おれが産まれた時父親が喜んですぐ外に連れ出そうとして看護師に怒られた話を発表した。 おれは顔が母親そっくりで、口元にあるホクロの位置もほぼ同じで、両性具有のせいなのか肌の色も絢人よりも白かった。 絢人は父親にも似ている気がするが少し違うようにも見えるから母親にも似ているのかもしれないが、絢人の母親の事は知らないのでよく分からない。 が、おれとは全く似ていなくて、母親が違うとはいえ弟なのが不思議だと思った時もあった。

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