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第6話
絢人との時間がなくなった分、音椰との時間が増えた。
音椰の親はうちの家族をあまり良く思っていない雰囲気だったが、音椰はそれに気づいていないのか、気づいていても知らない顔をしているのか、おれとは仲が良かった。
「兼ちゃん」
「ん?」
「声、低くなったね」
「ん、あぁ、こないだ熱出して下がったらこんな声になってた」
絢人にもびっくりされたが、母親が大人に近づいてるって事だと教えると、絢人はスゴいとかかっこいいとか言ってくれた。
「かっこいいよ、すごく」
「お前もそのうち低くなるって」
「低くなっても、兼ちゃんみたいにはならないよ」
おれの声は父親に似て低くなったが、音椰は少し低くなっただけだった。
代わりにおれより背が伸びて、中学の頃にはおれより7センチは高くなっていた。
音椰は小学生の頃からやっていた柔道を続けて、おれは中学からバレーボールを始めた。
過疎化している田舎町の中学のバレー部は試合に出られる人数も集まっていなくて、音椰が助っ人で試合に出て欲しいと頼まれたのがきっかけで入部した。
部員は先輩が3人、あとはおれと音椰とバレーボールをやってみたかったという奴の6人だった。
音椰は柔道の大会と重なったら試合には出られないから、その時は他の部活から助っ人を呼んで試合に出ていた。
練習もきつくなくて、先輩方も優しくて、おれは何故かセッターをやる事になったが、コーチからは筋が良いと言われた。
バレーボールを始めてから、おれは時々女の子から声を掛けられるようになった。
学校内でも、たまに練習試合でよその学校……同じように田舎で試合に出るのがやっとのバレー部と戦ったりしたが、そこで見に来ていた女の子たちがおれを見てかっこいいとかキレイとか言ってきて、手紙を渡してきたりもした。
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