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第9話
「えっ、こないだの子ともう別れたの?」
「あぁ、おれのカラダ見て気持ち悪い無理って言うからじゃあ別れるかって事で別れた」
高校は隣市の学校に行く選択肢もあったが、それなら朝早く起きて電車通学しなければいけないのが面倒だったのと卒業したら父親一族の経営する会社で働く事が決まっていたのとで商業関係の資格が取れる地元の高校に進んでいた。
音椰もおれと同じ理由で同じ高校に進学して、変わる事なく一緒にいた。
「兼ちゃん、ちょっと前にも同じ理由で別れてなかった?」
「そうだったか?覚えてないな」
高校でもバレーボールを続けていたおれ。
中学の時よりも試合が多く、少しキツいと思ったりもしたが、高校でもセッターとしてたまに試合に出たりもしていた。
音椰も変わらず柔道を続けていて、全国大会にも行ったりしていて、半年くらい前にクラスの女子に告白されて付き合うようになって、おれと違って今のところ長続きしていた。
「断りにくいのかもしれないけど、すぐ付き合うの止めた方がいいんじゃない?」
おれは相変わらず女の子に声を掛けられていて、嫌な感じがなかったらとりあえず付き合っていた。
中学から同じ高校に進んだ子や高校で出会った子、バレーボールの試合で他校に行った時に声を掛けてきた子、母親の仕事を手伝っていたら声を掛けてきた歳上の人。
キス以上の事もするようになったが、おれの普通じゃないカラダが原因で振られる事もあった。
「そうだな」
中学から数えたらかなりの数の女の子と付き合ったが、何人かは付き合って好きになったかもしれないと思う瞬間があったものの、ほぼ向こうから言われて何となく……で付き合ってきたので長続きしなかった。
その中に真っ青な顔をした子が現れた時もあって、その時は父親に連絡したが多少のショックを受けた。
そして。
おれは女の子と付き合いながら、相変わらず絢人とのキスを忘れられずにいた。
あのキスを思い出しながら自慰行為に耽るのが一番気持ち良くなっていた。
あいつは母親違いの弟なのに。
そんな背徳感も、おれの劣情に拍車をかけた。
拗れたおれの性癖は童貞はあっさり捨てさせてはくれたが、女の部分は自分の指と無機質な玩具しか知らないままだった。
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