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第10話

高校卒業までに取る事を目標にしていた資格を全て取ったおれは、卒業すると父親一族の会社の本社で経理担当として働き始め、時間がある時は母親の仕事を変わらず手伝っていた。 一族の会社、と言っても経営に透明性を持たせる為と町おこしの為という事で一族以外の人間も数多く働いている会社だった。 音椰は父親が社長を務める不動産部門で働き始め、頼まれて母校の小学校で柔道を教えるようになった。 互いに仕事の内容が違い、車の免許も取った事もあって、それまでほとんど一緒だった音椰と離れる時間の方が増えたが、仕事終わりや休みに会っていたから、疎遠になる事はなかった。 そうした日常を送る一方で、おれは観光船の運転手をしている父親と死神の仕事をしていた。 父親や絢人のようなチカラに目覚める事のなかったおれ。 だが、父親は自分ひとりでは限界があるから助かる、と、おれを変わらず必要としてくれた。 働き始めた事で死神の仕事がおれたち一族に富や幸運をもたらし、一族が金持ちでいられるという事をおれは身をもって知る機会に遭遇するようになった。 一方で、父親に聞く機会はいくらでもあったのに、おれは聞けずにいた。 おれに一生支えるようにと言った絢人はどうなったのか。 そして。 あの時言っていた、絆結の儀とは何なのか。 おれと絢人がキスした事と関係があるのか。 そんな疑問を抱えながら日々の暮らしを送っていたある日……。

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