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第15話
最後に会ってから10年以上の月日が流れていた。
就職して8年、おれは今年から総務部に異動になり、係長という役職を与えられ、新人研修の資料作りや初日のオリエンテーションの司会を何故かやらさせる事になった。
新卒の職員名簿を作成する仕事も与えられたおれが見たのは、
『犬養絢人』
と書かれた写真付きの履歴書だった。
丁寧な字と、端正な顔立ち。
ガキの頃の面影を残した、おかしいくらいに輝いている瞳。
絢人。
やっとお前に会えるんだな。
その夜のおれは、写真の絢人を思い出しながら狂ったように自分を辱めた。
入社式にも参加する事になったおれは、前日に父親と仕事をする事になった事もあってその話をした。
「俺は締めだしくらってるから行けねぇんだけどさ……」
と言いながら、父親はおれには言ってなかったがと前置いて、絢人とは仕事を継いでもらう為に定期的に会っていた事を話した。
「絢人がな、俺が一人前だって認めるまではお前に会わないと心に決めているからお前には会っている話をするなって言ってたんだ」
「そうなのか……」
「一人暮らしするって言ってたから、顔出してやれよ」
「あぁ……」
父親と別れてから、おれは絆結の儀について聞こうとしていたのにすっかり忘れてしまっていた。
絢人の事で頭がいっぱいになってしまっていたからだ。
それでなかなか寝られなくて、迎えた入社式には少し寝不足の状態で出席する事になってしまった。
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