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第21話

オリエンテーションの後は社屋内にあるホールで懇親会を行う事になっていて、そこには音椰も音椰の父親……叔父も出席する事になっていた。 音椰は今、専務として父親を支えていて、髪を伸ばしてからモテ始め、社内では容姿端麗かつ品行方正な人物という事で知られていた。 「兼ちゃん、お疲れ様、手伝える事ある?」 おれが懇親会の準備をしていると、音椰が声を掛けてくる。 「あぁ、そのビールサーバーを向こうに運んで欲しい」 「うん、分かったよ」 準備の間、絢人は他の新入社員たちと一緒にオリエンテーションの会場だった会議室で待機していてこの場にはまだいない。 「今日、どうだった?絢人くんも入社するって聞いてたけど」 「ん、あぁ、久しぶりに会ったらおれよりデカくなってて驚いた」 「そうなんだ」 音椰には午前中の事は言えない、と思った。 「今まで会った事がないから、どんな子なのか楽しみだな」 懇親会は音椰が司会を務める事になっていて、音椰は会場に周りを明るい雰囲気にさせられる空気を作ってくれた。 「犬養」 そこに、少し前まで上司だった経理部の部長がおれに声を掛けてくれた……が、その顔色は死が近い人間のものだった。 「境川部長、お疲れ様です」 おれは何食わぬ顔で挨拶し、サーバーで注いだビールを手渡した。 「楽しんでるか?そういや、お前の弟が入ってきたそうじゃないか」 「えぇ、向こうにおりますので、後ほど連れて来ますよ」 女性社員たちに囲まれている絢人の方に一瞬視線を移しながら言い、部長と別れる。 前々から健康診断で再検査を受けていると聞いていたが、そんなに悪い箇所があるのか。 ……苦しい思いをして死を迎える前に、楽にしなければ。 そう思っていると、背後から肩を叩かれた。

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