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第33話
「あの子だけが死んでしまうのは親としてとても辛い事でしょうね」
帰りの車の中で絢人が言った。
「ああいうのは初めて見た」
「俺は過去に1度だけありました。その時は母親になる人も死ぬ運命でしたので、ふたりとも見送りました」
俺のチカラは産まれる前の命は見送る事が出来ないんです、と言うと、溜息をついた。
「お前は最善の事をしたとおれは思う。高田の奥さんに話した事、あの場でついた嘘だったんだろう?おれにはあんな事出来ないから凄いと思った」
「……ありがとうございます、兄上様」
不意に、ガキの頃、どういう流れでその話になったか思い出せないが、絶対に嘘をついてはいけないと母親に言われていると話した絢人に父親が、
『人を悲しませない嘘ならついて良いんだ』
と言ったのを思い出した。
『そうなんですね!!ぼくもいいうそをつけるようになりたいです!!!』
あぁ言っていた絢人が、と思うと、感慨深いものがあった。
『今日は絢人の家に泊まる』
絢人が住むアパートに着くと、おれは母親にメールを送った。
夕飯はカレーを作る、というので野菜を洗ったり皮を剥いたりの作業を手伝うと、絢人は喜んでくれた。
「昔、母上様のお手伝いをした時みたいですね」
と言って、絢人は俺の母親の豚汁を作る手伝いをした時の事を話しだす。
「あの時、俺は皮が上手く剥けなくてピーラーを使っていたのに指を傷つけてしまって。血が流れて怖くなって泣いてしまったら兄上様がすぐ血を拭いて絆創膏を付けて下さいました」
「そんな事もあったな」
「もう大丈夫だから、と俺に言って下さった兄上様が男らしくてかっこよくて、ますます兄上様に惹かれました」
皮を剥き終わって手を洗っていると、絢人が背後から抱きついてくる。
「ちょ……っ……ン……」
顔を横に向けられ、おれはキスされていた。
舌が触れ合うと、カラダが急激に熱くなる。
「んはぁっ、ンんっ、、、」
唇が離れたと思ったら、それが首筋に移動してきつく吸われた。
「お、おい、お前どこに何つけてんだ」
「明後日までには消えていますよ、きっと」
兄上様の首筋が色っぽくて美味しそうなのがいけないんです。
「ぅあ……ッ……!!!」
着ている黒いシャツのボタンを外され、中の黒いシャツも捲られて胸を晒け出されて両方の乳首を摘まれる。
「かっこいいと思っていた兄上様は今やこんなにお可愛らしく色気に溢れていらして俺の事、誘っているようにしか見えません」
「あぁッ、やめろッ、ソコ、嫌だ……あぁ……ッ!!!」
女みたいに胸を揉まれ、乳首を弄られるのが気持ち良くて、おれは絢人のカラダにもたれてしまっていた。
「カレー作りがひと段落したら兄上様を抱きたいです」
耳許でそう言ってキスをすると、絢人はおれの服装を整えて鍋のある方へ行ってしまう。
中途半端にされたおれは頭がくらくらしていたが、何とかカラダを動かしてリビングのソファに腰を下ろした。
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