37 / 97

第37話

バレーボールをする準備の出来た絢人を乗せて一度帰宅すると、母親が居間でコーヒーを飲んでいた。 「ただいま」 「お邪魔致します」 絢人と部屋でヤッた後で顔を合わせるのは少し気まずかった。 「おかえり。絢人君、ここはあなたのお家になったんだから『ただいま』でいいのよ」 「ありがとうございます、母上様」 が、母親はいつもの調子で話してきた。 「どこか行くの?」 「体育館にバレーしに行ってくる」 「そう、気をつけてね。夜なんだけど宴会の予約が入ったから店開けるから」 「分かった、手伝うよ」 母親の言葉におれはこう言った。 普段は休みにしている日曜に宴会の予約が入るという事はたまにある事なのだが、大抵貸切の予約でひとりでは大変なのを知っているからだ。 「あの、母上様、俺もお手伝いしたいです」 「あら、いいの?嬉しいわ」 よくあるいつもの会話は、絢人がいる事で少しだけ違うものになった。 「兼輔のエプロンなら小さいわよね。兼輔、悪いけど、帰りに絢人君のエプロン買ってきて領収書貰ってきて」 「分かった」 母親の友人の店に寄ってエプロンを買う事を忘れないようにとスマホに記録した後、おれは着替えを済ませ整髪すると絢人と共に町の総合体育館に向かった。

ともだちにシェアしよう!