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第39話

「お、どうした?あぁ、あと2試合くらいは出来そうだから来れるなら来いよ」 その時、メンバーのひとりで音椰と仲の良い奴のスマホに音椰から連絡が入り、柔道の大会の手伝いが終わったからこちらに向かうという事をおれたちは知らされた。 「音椰さん、いらっしゃるんですね」 「あいつもメンバーだからな」 「…………」 おれの言葉に絢人の表情が一瞬暗くなるが、おれと目が合うと無理に笑った顔をした。 音椰は試合の途中でやって来て、準備運動をした後で仲の良い奴と交代しておれたちと同じチームになった。 「犬養の弟、めっちゃすげーんだよ。サーブとかヤバすぎるから手加減してもらってるんだ」 「そうなんだ。絢人くんもバレーボールやってたんだね」 「はい、大学卒業までやっていました」 笑っていない笑顔の応酬、に見えるのはおれだけだろうか。 そんなふたりが一緒に並んでブロックをすると、かなり高い壁に見えた。 「兄上様!!」 おれの手元にボールが来ると、絢人はずっと大きい声でおれを呼んでいたが、手を挙げておれを呼ぶ。 「!!」 そんなにアピールしたら相手チームに打つってバレるだろ。 と思いながらも、おれは絢人にトスを上げた。 高く飛び上がった絢人はブロックの隙間を狙うように軽くボールを打ち、1点をもぎ取る。 「凄いね、絢人くん」 「ありがとうございます」 また、笑っていない笑顔の応酬。 「兄上様のトスが的確なので得点する事が出来ました」 「そうだね。兼ちゃんは昔からトスが綺麗で上手いって言われてて、写真部の女の子に勝手に撮られたり美術部の女の子に勝手に描かれていたくらいだからね」 「……そうだったんですね。貴重なお話をありがとうございます」 「犬養はホントモテたよな、他校の子からも声掛けられてたし」 「そんな昔話どうでもいいだろ」 おれの話題で盛り上がったのが少し気になったが、不穏な空気にならずに済んで良かったと思った。

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